新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

経済・企業 挑戦者2021

高橋博之 ポケットマルシェ代表取締役 生産者の顔見て買おう

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 コロナ禍で外出の自粛が求められる中、生産者から直接、野菜や魚などの1次産品を買えるアプリが人気を集めている。

(聞き手=斎藤信世・編集部)

 北海道から沖縄まで5900人の生産者が旬の食材を直接消費者に販売できる直販サイト「ポケットマルシェ(ポケマル)」の運営をしています。野菜や果物、酪農品から花まで、商品は約1万3000点に上ります。(挑戦者2021)

 消費者はポケマルのアプリをスマートフォンにインストールした後、生産者と直接やり取りしながら商品を購入できます。商品は注文後最短で2日後に届きます。生産者側の出店料、出品料は無料で、売上額の15%を販売手数料として当社に支払う仕組みです。

 各生産者のページでは、農家になった理由や、生産物のこだわりを紹介しています。生身の生産者の思いを知ると、消費者にとっての食材の価値が変わるんです。例えば、スーパーに行けば普通は安い商品を選びますが、知り合いの農家が一生懸命作った野菜なら、言い値で買ってもいいと思うこともあります。どれだけ手間ひまかけて作ったかを知っているからです。

利用者はコロナ禍で7倍に ポケットマルシェ提供
利用者はコロナ禍で7倍に ポケットマルシェ提供

 コロナ禍でポケマルの利用者数は急速に伸び、現在はコロナ前の2020年2月比で、7倍の37万人が利用しています。外出の自粛期間に、各地域の豊かな食材を使って料理したいという人が増えたのでしょう。

 商品の価格はさまざまで、中には割高な商品もあります。生産者も、良い物を適正な価格で売りたいという人がいれば、規格外で廃棄せざるを得なかったものを割安で売りたい人もいる。消費者側は、良い物を生産している人を応援できたという充足感を得られるので割高でも利用する人が多いです。

新聞記者試験に失敗

 もともとは新聞記者になりたかったんです。就職活動がうまくいかなくて、留年を3年繰り返しながら、全国紙から地方紙まで100回以上エントリーしましたが全滅でした。

 そんな時、衆議院議員だったゼミの先輩が運転手を探していたので、面接のネタになると思い働きたいと申し出ました。今度は政治に興味が湧き、政治家になるために29歳で岩手県花巻市に帰りました。

 地元に帰ってからは選挙に出るために必要な人脈もお金もなかったので、毎朝7~9時に街頭演説をしました。「うるさい」と通報されることもありましたが、1年続けた後、無事に当選。2期目まで続けたのですが、任期が終わりかけた時に震災があり、議員を辞めて知事選に出馬しました。結果は落選でした。

 政治家を辞めて始めたのがポケマルのルーツとなる、日本初の食べ物付き情報誌『東北食べる通信』です。13年に創刊し、編集長として生産者の紹介記事を書き始めました。ただ、月額制の定期購読誌だったので、月に1人の生産者しか紹介できないことにもどかしさを感じ、「もっと多くの生産者を紹介したい」と思い、ポケマルを始めました。

 今、ポケマルは変革期にあります。9月27日には、ポケマル版のふるさと納税サービスを開始しました。総務省のふるさと納税は、お得感のある返礼品を求める寄付者と、それに応える自治体という、いわば費用対効果を最大化したような構図です。ポケマル版のふるさと納税は寄付者と生産者が直接つながれるので、地方と都市、消費者と生産者の距離が縮まります。結果として各地の農山漁村の活性化につながるのではないかと期待しています。


企業概要

事業内容:生産者と消費者をつなぐ産直サイト「ポケットマルシェ」の運営

本店所在地:岩手県花巻市

設立:2015年2月

資本金:約4億円

従業員数:60人


 ■人物略歴

たかはし・ひろゆき

 1974年岩手県花巻市生まれ。99年青山学院大学経済学部卒業。岩手県議会議員を2期務めた後、2015年2月にポケットマルシェを設立した。47歳。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事