経済・企業挑戦者2021

いまだにファクスが主役…受発注業務の煩わしさを独自のシステムで改善=田口雄介・コネクト代表インタビュー

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

田口雄介 コネクト代表 「ファクス」なのにデジタル感覚

 飲食業やアパレル業を中心に、いまだにファクスで行われている受発注をデジタル化するシステムを提供する。

(聞き手=白鳥達哉・編集部)

 商品の受発注をデジタル化するBtoB(法人向け取引)の受発注システム「CO-NECT(コネクト)」を運営しています。(挑戦者2021)

 受発注業務は、いまだにファクスや電話などのアナログなやり取りで行っているところが少なくありません。

さまざまなデータを管理・確認できる コネクト提供
さまざまなデータを管理・確認できる コネクト提供

 CO-NECTでは、パソコンやスマホなどから、EC(電子商取引)のような感覚で、商品の数・納品希望日を決めて注文ボタンを押すだけで簡単に発注ができます。一般的な紙の発注書に変換する機能も備えているので、受注側が従来のファクス機を使っている場合でも気にすることなく、業務の効率化が図れます。

 また、受注側については、あらゆる業種をサポートできるようにしていることを売りとしています。

 食品や服飾など、商品の種類が変われば説明に必要な項目も細かく変わってきます。そこで、ユーザー側で好きなように説明の項目を追加したり、写真を掲載したりできるようになっています。

 この他、受注や発注に関する細かいデータも取得しているので、毎月の発注・受注状況、売り上げの金額や取引件数などの情報も確認できます。

 導入費用については、発注側は無料、受注側は無料から有料までさまざまなプランを用意しています。

バー店員との会話から着想

「世の中のスタンダードになるサービスを作りたい」という思いから、楽天グループやリクルートでユーザーの使いやすさを重視したサービス開発に携わっていました。次第に自分でサービスを作ってみたいという考えが強くなり、事業を始めました。

 まず、自分がウイスキー好きだったこともあり、ウイスキーとITを掛け合わせたサービスを始めてみました。ウイスキーが飲めるバーの情報配信や、提携するバーで毎日、無料で1杯お酒が飲める月額制サービスです。しかし、なかなか収益化に結びつけることができませんでした。

 ちょうどその頃、たまたま飲みに行ったバーの店員との会話で、「ファクスでの発注が面倒だ」と言われたことを思い出しました。なぜいまだにファクスが使われているのかを調べたところ、「相手がファクスを使っているから」という、取引先との調整がネックになっていることが分かったのです。

 そこで、“調整を必要としないシステム”を作れば需要があるのではと考えました。2カ月という短期間で開発し、まずは発注側の機能のみで公開しました。はじめは最低限の機能しか持っていなかったため思うようにユーザー数が伸びなかったのですが、意見をどんどん取り入れて機能強化を続けることで、ユーザー数も増加。9月には広島県に営業所を開設するまでに成長しました。

 今後は、全国各地に営業所の開設を目指すとともに、CO-NECT上で取得できるデータを活用し、先々の需要予測や過去との比較ができるようサポートしたり、どのような商品を一緒に表示すると売れるのかなどのコンサルティングの提案をしていくことも考えていきたいですね。


企業概要

事業内容:法人向けデジタル受発注システムの開発・提供

本社所在地:東京都千代田区

設立:2015年6月

資本金:2億698万円

従業員数:29人(業務委託、インターン含む)


 ■人物略歴

たぐち・ゆうすけ

 1983年神奈川県生まれ。2006年立教大学法学部卒業後、楽天グループ、リクルートを経て、15年6月ハイドアウトクラブを設立、ウイスキー好きのためのメディアサービスの提供を行う。18年7月にファクスの受発注をデジタル化するシステムの提供を開始し、20年2月に社名をCO-NECTに変更。38歳

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