教養・歴史書評

認知症の理解浅い時代 医師の猛省と母への思い=美村里江

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 ドラマ「ドクターX」の監修の先生か、と気軽に手に取った『医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと』(森田豊著、自由国民社、1430円)。23年は長いな、と思いつつめくると、思いがけず感じ入ってしまう内容だった。

 認知症が発覚した70代の母親。その息子としての猛省記であり、医師の失敗談からのアドバイス集であり、なにより、ある一家を根底から見つめ直す物語である。

 看護師だった母と、産婦人科医の父。貧しい人々を懸命に治療する、山本周五郎原作のあの「赤ひげ先生」的経営で、家計は火の車。母は子供を育てつつ家庭を切り回し、病院でも夫の補佐として立ち回り、きれい好きで家も病院もピカピカ。そのうえさらに趣味の英会話なども全力で、学ぶ意欲旺盛。

 そんなしっかり者の頼もしき母が精彩を失っていき、家族はそれぞれ違った衝撃を受ける。食事したことを忘れる、家族を泥棒扱い、ガスの消し忘れ、振り込め詐欺にだまされる……。現在は誰もが知る代表的な認知症の症状が、20年前にはまだ知られていなかった。世に知られる「医学的常識」は、多数の患者とその家族による気付きが重なってできてきたのだと思い知る。

 家族の一員として、医師として、具体例と共に徹底的に過去の自分へのダメ出しが続く。それほど対応が遅れたことに後悔したのだろう。

 特に第5章「僕なりに考える、認知症の予防と対策」は、息子と医師の視点が融合され、大変わかりやすい内容でためになる。23年の時を経て自身も70代に近づいたことで、10年以上出費の続いている介護施設費用への不安や、死への考えも率直に書かれている。

 ご自身をマザコンと自虐しているが、母親への愛情と共に伝わってくるものが多い良書だった。

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「俵さんの俵には何が入っているんだろう」

 本のつかみとして抜群の一文だが、こうした高精度に輝く言葉がひょいひょいやりとりされていくリモート対談を、…

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