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経済・企業 2023年の経営者

デジタルで地方を元気に!人口減社会の最適解を探す――福留大士・チェンジホールディングス社長

Photo 中村琢磨:東京都港区の本社で
Photo 中村琢磨:東京都港区の本社で

チェンジホールディングス社長 福留大士

ふくどめ・ひろし
 1976年鹿児島県出身。私立れいめい高校卒業。1998年中央大学法学部卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。コンサルタントとして、政府官公庁や金融機関などの業務改革、IT導入プロジェクトに携わる。2003年にチェンジ設立、現職に就任。前橋市や福岡県太宰府市のまちづくりアドバイザーなども務める。47歳。

 Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

>>連載「2023年の経営者」はこちら

── 今年4月で、起業から20年を迎えました。改めて、起業のきっかけや、社名に込めた思いは。

福留 自分が実現したい社会を形にしようとの思いで起業しました。2003年当時、日経平均株価は8000円台を割り込んでいました。持続可能な日本にするには、さまざまな構造を変えなければと感じていました。設立当初からミッションとして掲げたのが、「チェンジ・ピープル、チェンジ・ビジネス、チェンジ・ジャパン」という、人を変え、組織や企業、ビジネスを変え、そして日本をより良い方向へ変えることです。その理念を社名に込めました。

── どんなサービスをどのような対象に提供しているのですか。

福留 特に地方創生に注力したく、一つは「LoGoチャット」というクラウド型ビジネスチャットのサービスを自治体向けに提供しています。各自治体は、例えば新型コロナウイルス感染症に対する接種券の送付など、同様の業務を、各職員が、自分たちで考えて遂行します。このばらばらでやるもったいなさを解消するのが目的です。ある自治体職員が先駆的な方法を思いついた場合、別の自治体職員でも気軽に情報共有できれば、その自治体にも生かせます。

 地方に不足しがちな、デジタル技術を使ったサービスをたくさん提供したいと考えています。一つの目標として、当社のさまざまなサービスが、ほとんどの自治体で使われるようにしたいですね。

── 地方創生とDX(デジタルトランスフォーメーション)を経営の柱に据えています。

福留 私の最大の問題意識は人口減少という課題です。特に生産年齢人口の減少は、地方にとって死活問題な上、今後も続きます。生産性を上げ、より少ない人数で、さまざまなことをできるようにするのが大事だと思います。デジタル技術は、行政サービスそのものや手続きを変えることができ、利便性向上に最適なツールです。

── 人口減少の原因である少子化を、前提とした考えですか。

福留 もちろん少子化対策も必須です。でも、子どもが減ることは同時に「少母化」でもあります。母親になる予備軍も減る。(22年に生まれた)約80万人の半分が女の子だとして、さらに婚姻率などさまざまな数字をかけると、1学年に20万人、30万人という時代も、遠くない未来です。少ない人数になった社会をどう最適にするか。これに対する答えを探した方が、建設的だと思っています。

── 地方のポテンシャルを、どう捉えているのでしょうか。

福留 非常に高いです。日本には北海道から沖縄まで、多様な風土、文化があり、魅力はたくさんあります。あとは本気で取り組む人や企業がどこまで増えるか。そして、自治体や地方銀行など地域を取り巻くプレーヤーがどの程度本気になるかだと思っています。

── 複数の地銀と連合を組むSBIホールディングス(HD)と1年前、資本業務提携を結びました。狙いと、その後の経過は。

福留 SBIHDには地方創生のど真ん中の課題に取り組み、地場産業を盛り上げたいとの思いがあると伺い、その中で、地方創生の事業を当社が持ち分法適用関連会社になることで、中核プレーヤーとして担おうと、提携しました。

 一緒に取り組んでみて、金融機関が地方で果たす役割は、非常に大きいと感じました。地方の課題として、最低限の資金は東京から分配されても、新しい産業や、地域を活性化させる社会資本を整備するための、プラスアルファの資金が回っていない現状があります。地方に資金を回すことが、(提携によって)加速しましたね。

── 今年4月にはホールディングス化もしました。

福留 当社傘下の事業会社全体の経営スピードを上げるのが狙いです。取り組む課題も、実現したい事業も、後手に回れば回るほど、課題は深刻化します。スピーディーに手を打つためには、経営スピードも欠かせません。

── ファミリーレストラン向けの「猫型配膳ロボット」を開発し、最先端のロボット技術を持つ企業を子会社化するなど、M&A(企業の合併・買収)も積極的です。

福留 人口減少に立ち向かう商材をそろえていきます。配膳ロボットは人手をロボットで代替する、典型的ツールです。直近ですとインバウンド需要の回復も見込み、今年1月に観光業のDXに強みを持つ企業を子会社化しました。実現したい社会に向け、取り組むべきテーマ別に実施していきます。

── M&A効果もあり、近年の業績は右肩上がりですが、足元の経営環境をどう見ていますか。

福留 解決した課題が少ない中での業績なので、まだスタートラインです。会社の価値を高めて資金調達した資金でまた投資することで、解決できる課題の幅を広くしていくことで、事業規模はもっと大きくなると考えています。

(構成=荒木涼子・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 2011年の東日本大震災直後、インドなどから来ていたIT技術者が原発事故への懸念などで帰国してしまい、当時60人ほどいた従業員が半数になってしまいました。全てのプロジェクトが止まり、立て直しに1年かかりました。

Q 「好きな本」は

A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』です。

Q 休日の過ごし方

A デスクワーク中心なので、ランニングや筋力トレーニングなど、体力を使う活動をしています。そういうときにアイデアがひらめくこともあります。


事業内容:ITを活用したコンサルティング業

本社所在地:東京都港区

設立:2003年4月

資本金:10億400万円(23年4月1日現在)

従業員数:328人(22年3月末現在、連結)

業績(23年3月期〈IFRS〉、連結、見込み)

 売上収益:210億円

 営業利益: 70億円


週刊エコノミスト2023年5月16日号掲載

編集長インタビュー 福留大士 チェンジホールディングス社長

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