経済・企業2024年の経営者

学生マンション管理戸数で首位――近藤雅彦ジェイ・エス・ビー社長

Photo 武市公孝:東京都新宿区の東京本部で
Photo 武市公孝:東京都新宿区の東京本部で

ジェイ・エス・ビー社長 近藤雅彦

こんどう・まさひこ
 1970年愛知県出身。中部大学春日丘高校卒業。95年第一経済大学(現日本経済大学)経済学部を卒業後、ジェイ・エス・ビー入社。2009年取締役、20年取締役副社長、21年現職。53歳。

 Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

>>連載「2024年の経営者」はこちら

── 少子高齢化が続き、コロナ禍があった中、3期連続で増収増益となった要因は何ですか。

近藤 「ユニライフ」のブランドで全国展開している学生マンション事業が好調です。管理戸数をおおむね計画通りに年5000戸ほど増やすことができ、入居率も満室に近い状態を維持できたことが業績に寄与しています。

 そもそも学生マンションとは入居者を大学生や専門学校生などの学生に限定し、24時間対応のセキュリティーなど管理サービスを提供し、家具や家電を備えたマンションのことです。当社は地主に学生マンションの建設を提案し、完成後は入居者の募集、それに管理サービスや入居者対応を請け負っています。昨年4月末現在、約8万5000戸を管理し、自宅外に住む学生に対するシェアはおよそ5%、同業他社を合わせても10%前後にすぎません。少子化は確かですが、進学率は上がっているのでそこまで大きな影響はありません。

── 創業の経緯は。

近藤 1976年、京都市で学生向けの下宿仲介業者として創業しました。それから間もなく、地主に物件を建てる提案をし、完成後は掃除、家賃回収、入居者対応などを受託するようになりました。80~90年代には同志社大学や立命館大学が郊外にキャンパスを新設するのに合わせて営業エリアを広げ、今は全国展開しています。

食事付きマンションも

── レオパレス21など賃貸住宅大手との違いや強みは。

近藤 一つ目は、建設部門を持っておらず、建設で利益を上げていません。だから競争力の高い建物を開発できます。二つ目は、生活スタイルが社会人と異なる学生に限定し、トラブル発生時は24時間対応で駆けつけるといった付加価値を付けていることです。入居者は3月下旬の卒業時に退去し、新たな入居者が4月初旬の入学式に合わせて入ってきます。無駄がないサイクルとなっています。

── 入居者に食事を提供していますか。

近藤 ここ10年ぐらいの間でニーズが増えました。通常、学生マンションは20、30戸の規模が多いのですが、食事を提供するには100戸ぐらいの規模が必要です。そのような物件を当社では「学生会館」と呼んでおり、食堂のほかラウンジやシアタールームといった共用部を設けています。少子化の影響があるのかもしれませんが、子ども1人当たりの養育費が増えています。

 保護者の間で子どもが自宅を離れるタイミングで安心・安全な所に住ませたいという要望が高まっているという印象があり、それが食事付きの物件の人気につながっていると思います。調理師や栄養士を配置し、味だけでなく栄養面でも安心できる手作りの料理を朝と晩に提供することで、多忙な学生に喜んでもらっています。新型コロナウイルスの感染拡大でキャンパスに入構できなかった時期でも、「食堂で友だちを作れた」という声を聞いています。

海外進出を検討

── 昨年9月、高齢者住宅事業を学研ホールディングスの子会社に売却した理由は何ですか。

近藤 利益を出していましたが、より好調な学生マンション事業に特化したいという経営判断をしました(高齢者住宅事業の2023年10月期セグメント利益は前期比19.1%増の3.1億円)。学生マンション事業を住まいの提供からサービスの提供へと進化させていくのが目標です。

 今までは「合格した大学に進学するために学生マンションに住む」という考えでしたが、今後は「ユニライフの学生マンションから通える大学に行きたい」と変わる学生が出てきてほしいと期待しています。22年からは京都市の学生マンションで、就職活動、パソコン、護身術などを学べる「学びのマンション」を始めました。これからも力を入れていきたいと考えています。大阪府の物件でも展開し、講座を開いているのは計3棟になっています。

── 30年に向けて重視していることは何でしょうか。

近藤 20年に策定した長期ビジョンで30年の「ありたい姿」として掲げた目標の一つは、ユニライフをグローバル・トップブランドにすることです。海外については、基本的には今と同じようなビジネスモデルを学生数が多い米国などで展開することを検討しています。

 先ほどシェアがおよそ5%とお話ししましたが、学生に限らない賃貸住宅の管理戸数順位は12位です(23年8月4日付の業界紙『全国賃貸住宅新聞』による)。学生マンションでは首位です。入居者を伸ばす余地はまだまだあります。今後も管理戸数を増やしてサービスの提供を拡大し、知名度を高めていきたいと考えています。

(構成=谷道健太・編集部)

横顔

Q 30代はどんなビジネスパーソンでしたか

A 中国四国の新規エリア開拓を任せられ、駆けずり回っていました。

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 以前、一部の学生マンションを自社組成のファンドに組み込んでいましたが、リーマン・ショック(2008年)が起きた直後はファンドを組成できなくなり、苦労しました。

Q 休日の過ごし方

A 健康に気遣い、仕事のことは考えないようにしてウオーキングしています。


事業内容:学生専用マンションの企画、運営

本社所在地:京都市

創業:1976年12月

資本金:42億円

従業員数:1191人(2023年10月末、連結)

業績(23年10月期、連結)

 売上高:637億円

 営業利益:71億円


週刊エコノミスト2024年2月20・27日合併号掲載

編集長インタビュー 近藤雅彦 ジェイ・エス・ビー社長

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事