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「新型コロナ不況」がアパレル業界の息の根を止める=岩下祐一・「繊維ニュース」上海支局長

    各社がライブ動画配信を使ったネット通販で在庫処分に乗り出したが、明暗は分かれた(筆者撮影)
    各社がライブ動画配信を使ったネット通販で在庫処分に乗り出したが、明暗は分かれた(筆者撮影)

     新型コロナウイルスの感染拡大で、中国のアパレルブランドが苦境に陥っている。店舗休業で春物の販売が進まず、在庫が拡大。2カ月近く店舗の売り上げがなく、資金繰りが悪化している。

     春節(旧正月)連休が始まった1月24日から感染拡大を受け、各地の街から人影が消えた。多くのアパレルブランドの店が休業に追い込まれた。深圳市華創服飾有限公司が運営するフランス発の高級メンズブランド「ダニエル エシュテル」も春節から40日間、全店舗の9割の約130店を閉めた。

    衣料品は売上高3割減

     消費への影響は甚大だ。2020年1~2月の社会消費品小売総額(小売店舗やネット通販の売上高合計)は、前年同期から2割減り、統計を取り始めた1994年以降初のマイナスだった。うち衣料品は3割も落ち込んだ。

     実店舗の休業で、製品の在庫を持つブランドは春物処分に追われた。これまでネット通販を手掛けていなかった中小ブランドや高級ブランドも含め、“直播(ライブ動画配信)”を活用したネット通販に一斉に乗り出した。

     大手の一部は、こうした販売で成果を上げている。スポーツ最大手の安踏(中国)有限公司は、社員や加盟店関係者ら約3万人が個人間取引サイト「微店(ウェイディエン)」に店舗を開設し、1日当たり1000万元(約1・6億円)を売り上げた。カジュアルブランド「ピースバード」の太平鳥グループも直播を積極活用し、日販800万元(約1・3億円)超を稼いでいる。

     ただ、こうしたケースはまれだ。特に急ごしらえでネット通販を始めた中小ブランドは、経験不足などから効果は限定的で、失った売り上げをカバーできていない。

     一方、実店舗を持たないネット通販専業ブランドは、相対的にダメージは軽微だが、消費マインドの低迷で販売は芳しくない。アリババの通販サイト「淘宝(タオバオ)」専業の大手高級レディース「D家」の売り上げは、3月に入り回復傾向にあるものの、前年同期の7、8割にとどまる。

     在庫を持たない一部のネットブランドは、工場の再稼働の遅れで製品の供給不足にも直面。中高級レディース「ダディンコワ」を運営する青島紫墨服装の楊純総経理は「縫製工場が一時的に生地や資材などの不足に陥った」と話す。

     こうした中、中小ブランドを中心に資金繰りに苦しんでいる。高級セミオーダーブランド「タオレイ ワン」を手掛ける香港共存国際有限公司の王陶董事長は「キャッシュフローが悪化している。資金不足になれば、次の企画などに影響が出る。中国のブランドは皆同じような状況だろう」と語る。

     国内での感染が抑えられ、社会は正常化に向かいつつあるが一旦落ち込んだ消費は簡単には戻らない。上海久光百貨の来店客数は前年の4割程度。売れているのは食品や小家電など生活必需品に限られ、アパレルの動きは鈍い。

    「街を歩く人がみんなマスクを外したときに、我々の商売もやっと正常化する」とあるブランド関係者は話すが、楽観的かもしれない。海外での感染拡大が深刻化し、輸出型企業が打撃を受け始めた。景気がさらに冷え込めば、ブランド各社も大きな影響を受ける。新型コロナの影響は長引きそうだ。

    ■岩下祐一(「繊維ニュース」上海支局長)

    (本誌 〈新型コロナで苦境のアパレル 資金繰り悪化も消費回復遠く=岩下祐一〉)

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