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中国人の爆買い20兆円がコロナで消滅……その分のチャイナマネーはどこに流れているのか

    空港の出発ロビーはガラガラ(北京市の北京首都国際空港で7月6日)(Bloomberg)
    空港の出発ロビーはガラガラ(北京市の北京首都国際空港で7月6日)(Bloomberg)

     日本各地の百貨店やドラッグストアの免税カウンターから中国人観光客の姿が消えている。日本政府観光局によると、5月の訪日外国人は前年同月比99・9%減の1700人で、うち中国人はわずか30人。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、1年前の約76万人が消えた。2019年に国別最多の95

    9万人いた中国人訪日客は今年は数分の1以下になる見通しだ。

     中国人の出国者数(渡航先には香港、マカオを含む)は、19年に前年比3・3%増の延べ1・55億人となり、過去最多に。世界観光機関によると、18年の中国人の海外での消費金額は世界1位の2773億ドル(約29・8兆円)だった。19年の中国人の海外消費金額を、出国者数の前年比増加率から試算すると、2864億ドル(約30・8兆円)。一方、19年に中国が海外から受け入れた旅客は延べ1・45億人、消費金額は中国の統計で1313億ドル(約14・1兆円)だった。

     世界観光機関は5月、20年の国際観光に関する三つのシナリオを発表している。9月初旬から各国が段階的な国境開放と旅行規制の緩和を行う中間シナリオでは、世界の国際旅客数は前年比で70%減少する。これを中国に当てはめると、20年の出国者は前年比1・08億人減の延べ4650万人、海外消費金額は同2005億ドル(約21・6兆円)減の859億ドル(約9・2兆円)となる。同様の試算で、20年の海外から中国への旅客は同1・01億人減の延べ4350万人、消費金額は同920億ドル(約9・9兆円)減の393億ドル(約4・2兆円)となる。

     両試算の消費減少分の差額の1085億ドル(約11・7兆円)は、19年の中国の名目国内総生産(GDP)比で0・7%に相当する。中国人の「国ごもり」は、日本を含む人気の渡航先の国々の経済には打撃だが、中国にとってはGDPを最大0・7%押し上げる効果を持つということだ。

    割安な国産品市場へ

     では、中国の消費者が海外旅行で使うはずだった資金はどこへ向かうのか。国内観光や外国製ブランド品の購入といった代替消費だけではない。コロナ禍で所得が減ったり、サプライチェーン(供給網)の停滞で粉ミルクなどの輸入品の入手難に直面した中国の消費者の間では、国産ブランド品を見直す動きが出ており、浮いた海外旅行資金の一部は、割安な国産品市場に流れていると見られる。

     また、経済的に余裕のある層は住宅の購入資金の一部に充てたり、株などの金融商品の購入を増やしている。コロナ前は毎年海外旅行していた当社の中国人社員の一人は「浮いた資金の3分の1は貯金や保険に、残りは子供の教育費や国内旅行に充てる。内モンゴルの草原ツアーか広東省のテーマパーク訪問を検討中」と語った。

     国際的な人の移動は数年後には正常化し、中国人の出国者数はやがてコロナ前を上回るだろう。パスポート保有者は19年9月時点で約1・6億人、総人口の13%に過ぎず、今後の保有率の上昇と、国民所得の伸びがその見通しを支える。一方、現時点でパスポートを持つ、中国の消費市場の中核を担う2億人弱の「国ごもり」は当面続く。その影響分析はウイズコロナ期の商機を捉え、コロナ後への布石を打つヒントになり得る。

    (岸田英明・三井物産〈中国〉有限公司チーフアナリスト)

    (本誌初出 コロナで消える“海外旅行マネー” 20兆円超が「国ごもり」=岸田英明 20200728)

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