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不況の深刻化 女性雇用を奪ったコロナショック 非接触、非正規減、EC化の三重苦=永浜利広

    足元で女性雇用者数は減少傾向にある
    足元で女性雇用者数は減少傾向にある

    「コロナショック」という言葉に象徴されるように、今春に新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、日本は不況の真っただ中をさまよっている。そしてこの間、労働市場ではある大きな変化が起きている。それが、労働市場における女性労働力需要の相対的な低下である。その結果として、2008年のリーマン・ショック後に起きた「男性不況」と逆の状況が引き起こされている可能性がある。

    固まる財布のひも

     男性不況の原因は大きく以下の二つがあった。(1)グローバル化の進展による製造業の雇用者の減少と、少子高齢化による建設業の雇用者の減少で、男性比率の高い職場が減った。(2)高齢化の進展による医療・介護の雇用者が増加し、女性比率の高い職場が増えた。

     実際に、リーマン・ショックの翌09年の男性就業者数は前年比79・8万人減少したのに対し、女性就業者数は同14・7万人減にとどまった。さらに、これを雇用者数で見ると、男性が同63・0万人減、女性が同1・0万人減となっており、女性の雇用者数がほとんど減少しなかったことがわかる。

     これに対し、コロナショック後となる年度明け以降の労働力調査を見ると、4〜5月平均で男性就業者数は前年4〜5月平均比34・5万人減少しているのに対し、女性就業者数は同44・5万人減っており、職を失う女性が男性に対して1・2倍となっている。

     さらに、これを雇用者数で見ると、男性が同22・0万人減、女性が同33・5万人減となっており、男性の1・5倍以上のペースで雇用者数が減少していることがわかる。

     コロナショック後の労働市場では、このような「女性雇用減>男性雇用減」が進行しており、社会のあり方をも変えようとしている可能性がある。

     背景には、大きく三つの要因がある。(1)非接触化の進展によるサービス関連産業や卸・小売業の雇用者数の減少で、女性比率が高い職場が減った。(2)不況により、相対的に女性の多い非正規労働者の雇用機会が減少した。(3)オンライン化・EC(電子商取引)化の進展による運輸・郵便業や情報通信業の雇用者数が増え、男性比率が高い職場が増加した。

     このように、女性の就業環境悪化は着々と進行し、気がつけば男性の就業減を大きく上回る事態に陥っている。すでに女性の就業環境悪化は現実のものとして、我々の生活の至る所に影響を及ぼし始めている。しかも、コロナショック特有の事情が重なり、今後はさらにこの状況が深刻化することが予想される。

     また、新しい生活様式の導入を受けて経済構造が変化した場合、リモート活動の拡大などにより、従来の女性比率が高い職場の労働需要も元に戻らない可能性がある。

     今後は女性の雇用が減少することで、1世帯当たりの所得が減り、財布のひもが固くなれば、さらに経済が悪化していく可能性があるといえよう。

    (永浜利広・第一生命経済研究所首席エコノミスト)

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