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衝撃の事実…… 日本のコロナ対策の成績は「メキシコ並み」でしかなかった

 海外メディアの論調の逆輸入によって、「日本はコロナウイルス対応に比較的成功した国だ」という雰囲気を感じることがあるが、そんな美談に終わらせてよいのだろうか。図は主要国の鉱工業生産の直近1年間の推移からみた最新の「経済成績表」だ。

 一番上のグループ(1)は、事前に防疫体制がある程度構築できていて、感染の抑制と経済の両立に成功した国々。豪州も恐らくここに入るだろう。韓国は3月までに自国の感染問題は解決したが、対欧米の輸出減で4~5月に低下した。ただ6月の輸出は戻っているので、恐らくこれ以上は下がらず、前年比で1割以下の低下で済みそうだ。

 グループ(2)は、防疫体制が不十分で、一度は感染爆発と医療崩壊に甘んじたものの、日本とは桁違いの検査体制を急速に構築し、コロナ禍からの早期脱出を図った欧米諸国。4月は日本より悪かったが、5月には逆転し、前年比で2割程度までのマイナスで済んでいる。

 グループ(3)は、日本、トルコ、メキシコなど。日本は確かにまだ低感染率で済んでいるが、それは同調圧力に逆らえない国民の自粛によって経済を犠牲にしたからに過ぎず、防疫体制が整っていたからではない。感染爆発、医療崩壊した国々よりも厳しい状況で、反発のタイミングも遅い。

 グループ(4)はインド、南アフリカ。中国と同様に経済を一気に止めたが、感染増を抑える防疫体制が構築できないまま結局は経済活動を再開。どっちつかずの結果に終わりつつある国々である。

(注)スフィンクス・インベストメント・リサーチによる季節調整値 (出所)データストリーム
(注)スフィンクス・インベストメント・リサーチによる季節調整値 (出所)データストリーム

検査体制強化しかない

 これは、あくまで中間成績であり、コロナ禍だけが変数でもないが、ともかくこのような現況において、日本がグループ(3)からグループ(2)へはい上がろうと思うなら、両者を分け隔てる「検査の多寡」に注目せざるを得ない。検査能力を大幅に増やして周辺事例を早期発見し、隔離、追跡を進める仕組みを整えれば、経済再開によって市民の接触がある程度増えたとしても、感染者が増えることはない。日本はまだこの体制が不十分なのだ。

 日本は今、第2波の渦中にあるが、第1波への対応で経済を大きく落ち込ませた反省もあってか、ブレーキを踏むのを極端にためらっているように見える。だが直近の検査陽性率は東京で6%前後(グループ(1)、(2)はおおむね1%未満)で、検査体制が追いつかなくなりつつある。ここで感染拡大を許すと、どっちつかずのグループ(4)への転落もあり得る。今更ながら、早急な世界標準レベルの検査体制の構築が求められている。

(藻谷俊介、スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表取締役)

(本誌初出 日本の「経済成績」はメキシコ並み=藻谷俊介 20200804)

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