アップルにも見捨てられ……インテルが半導体首位の座を韓国サムスンに明け渡す日
半導体の世界王者、米インテルの地盤沈下を感じさせるニュースが続いている。同社は7月23日、2020年4~6月期の決算を発表し、コロナの影響が懸念される市況下において、連結売上高は前年同期比20%増の197億ドルと好調を維持、期首予想の185億ドルを上回ったが、翌日の同社株価は60・40ドルから50・59 ドルへと大きく下落した。
株価下落は、7ナノメートルの微細加工プロセスの立ち上げが予定から6カ月遅れることを決算発表で明らかにしたことが懸念視された。14ナノメートルから現行の10ナノメートルへの移行も予定から約2年遅れるなど、同社の最先端プロセス開発は台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子に先行を許す状態が続いている。
パソコン市場で競合する米AMD、7月上旬に株式時価総額でインテルを初めて上回った米エヌビディア、5G(次世代移動通信システム)で先行する米クアルコムなど、競合する米半導体各社はいずれも生産工場を持たないファブレス企業で、製造をTSMCに委託。微細加工のプロセス開発で難航するインテルは、今後も設計から製造まで自前で持つIDM(垂直統合型の半導体メーカー)にこだわり続ける必要があるのだろうか。
決算では、売上高が1~3月期(前年同期比23%増)に続く4~6月期も好調だったが、20年度通期の売上高見通しが同4%増にとどまる見込みだと公表。パソコン需要は後半が伸びない上に、需要をけん引したIT大手によるデータセンター投資も4~6月期がピークだったという同社のコメントも株価を押し下げた。
20年に首位陥落も
インテルの置かれた厳しい現状を印象付けたのは、米アップルが6月下旬に、パソコン「Mac」に搭載するCPU(中央演算処理装置)をインテル製から自社開発に切り替えると発表したこと。約2年間かけて「脱インテル」を進める方針で、06年以来続いてきたアップルとの蜜月は終わる。
中長期で見れば、5Gの通信インフラに対応するパソコンではクアルコムが強力なライバルになり、サーバー向けではエヌビディアや米ザイリンクスとの競合が激化しそうで、同社が圧倒的に優位だった分野でも安泰でいられる保証はない。
半導体業界の主役がパソコンからスマホに切り替わったことで、同社はハイテク業界の王者ではなく、大手半導体メーカーの1社に過ぎなくなっている。製品技術でも微細化技術でもトップ水準を狙うという同社のこだわりは大きな負担となっているはずだ。
20年はメモリー市況が回復基調で、メモリーに強いサムスンが半導体売上高でインテルを抜き世界首位に返り咲く可能性がある。限られた経営資源をどこに注力するのか。インテルは大きな岐路に立っている。
(大山聡・グロスバーグ代表)
(本誌初出 主役交代 地盤沈下続く王者インテル 垂直統合モデルに限界=大山聡 20200818)