香港からの亡命者が脱出先に選ぶのはやはり「あの国」だった
香港で昨年から続く抗議デモを受け、台湾への移住を目指す市民が増えている。中国政府が香港への統制を強化する国家安全維持法が施行されたことで、この流れがさらに加速するのは必至だ。
昨年7月以降、香港で抗議デモに加わった若者ら200人以上が警察の捜査を逃れるため、台湾に事実上、亡命している。台湾を逃亡先に選んだのは、市民団体などの支援が手厚いためだ。亡命した20代の男性は「教会の支援を受け、居住権も得て台湾の大学に入学できた」と話す。今年4月には、香港から逃れた若者らが働くカフェ「保護傘」が台北市にオープン。生活を支える役割を果たしている。
2019年の香港からの台湾の居住権取得者は18年比で41%増と、デモ参加者以外の台湾移住者も増加傾向にある。移住を検討する男性(38)は「台湾は物価が安く、友人が多いので生活の基盤を作る支援が得られやすい」という。香港市民は日常的に、広東語を話すが、1997年の香港返還から学校で中国語(北京語)の授業が増えた。台湾も中国語を使うため、若年層には言語の垣根も低い。蔡英文政権は7月1日、移住を希望する香港市民向けの専用窓口を設置し、進学や就職の相談を受け付けている。
(福岡静哉・毎日新聞台北支局)
(本誌初出 台湾 増える香港からの移住希望者=福岡静哉 20200818)