教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

これからはオールドタイプが駆逐されニュータイプの時代がやってくるのか 哲学者はこう考える

    第91期ヒューリック杯棋聖戦 藤井聡太棋聖就位式 賞杯を手にする藤井棋聖
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     Q コロナ後に訪れるという時代の大変革に一抹の不安を感じます

     A 人間のクリエイティブ力を信じ、新しい生活様式を手に入れよう

     来年の世界経済フォーラム(ダボス会議)のテーマは「グレート・リセット」だそうです。新型コロナウイルスによるパンデミックを体験し、価値観を根本的にリセットして新たな時代に立ち向かおうという意味のようですが、革命が起きるみたいで、不安です。

    (中小企業経営者・60代男性)

     グレート・リセットとは、この言葉を編み出したリチャード・フロリダによると、「大不況後の社会回復の機会」という意味があります。彼はアメリカ出身の社会学者で、都市論で知られる思想家です。

     来年のダボス会議のテーマがグレート・リセットに決まったというニュースを耳にする直前、私自身もこの言葉が頭に浮かんでいました。さまざまな企業でビジネス哲学研修を実施し、常にウィズコロナ時代の社会をどうとらえるべきか考えていたからです。

     実は私が初めてこの言葉に出合ったのは、2010年に出されたフロリダの本のタイトルでした。

     フロリダは過去150年の間に少なくとも3回のグレート・リセットがあったと言います。1、2回目は大恐慌が起きた1870年代と1930年代です。そして3回目は2008年のリーマン・ショックだったとしています。だからこそ、この3回目のリセット後に本書を発表し、今後の処方箋を提示したのです。そこで挙げられている第一の原則は、すべての人間がクリエイティブな存在としてとらえられていることです。

    新しい価値観探る

     その点を重視すれば、危機を乗り越えて社会はいい方向にリセットできるということです。面白いのは、リセット後の次世代を担う人たちのことをフロリダが「ニュー・ノーマル」と呼んでいる点。くしくも、これは今私たちがウィズコロナ時代の生き方として使っている用語です。新しい日常、新しい生活様式といった意味です。

     フロリダ自身は、この言葉を「可動性と柔軟性を重視して都市生活を送る人々」という意味で使っているわけですが、これまでとは違う新しい価値観のもとに生きていくという点では、今の私たちの状況と同じです。

     グレート・リセットの後には、新しい価値観に基づいた新しい生活様式が求められるのです。今私たちは新型コロナのせいで4回目のその機会を迎えています。社会がこれからどうなっていくか分かりませんが、フロリダの言うように私たちが社会や環境に対するアンチテーゼを持ちつつ、新しい価値観を構築できるクリエイティブな存在であることを意識すれば、突破口が開けるはずです。

    (イラスト:いご昭二)

    (本誌初出 コロナ後に訪れるという時代の大変革に一抹の不安を感じます/49 20200929)


     リチャード・フロリダ(1957年~)。アメリカ出身の社会学者。専門は都市社会学。クリエイティブ・クラスという新たなエリート層が都市に集積し、世の中を主導していくと説く。著書に『クリエイティブ都市論』など。


    【お勧めの本】

    リチャード・フロリダ著『グレート・リセット』

    フロリダのグレート・リセット論の詳細がよく分かる


    読者から小川先生に質問大募集 eメール:eco-mail@mainichi.co.jp


     ■人物略歴

    小川仁志(おがわ・ひとし)

     1970年京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部教授(公共哲学)。20代後半の4年半のひきこもり生活がきっかけで、哲学を学び克服。この体験から、「疑い、自分の頭で考える」実践的哲学を勧めている。

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