教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

知っているようで意外と知らない地熱発電の仕組み なぜ日本で地熱発電が広がらないのか

山葵沢地熱発電所=湯沢市で2019年5月17日15時14分、佐藤伸撮影
山葵沢地熱発電所=湯沢市で2019年5月17日15時14分、佐藤伸撮影

 日本は世界有数の火山国で、そこに湧く温泉はまさに「火山の恵み」である。温泉は地下深部にあるマグマが地下水を温めた産物だが、その熱をクリーンなエネルギー源として利用できる。

 1973年の第1次オイルショック以来、地熱エネルギーが石油に替わる純国産エネルギーとして注目されてきた。さらに2011年の東日本大震災以後、再生可能エネルギーとして地熱発電に脚光が集まり、国は30年度まで150万キロワットの発電を目標とした。しかし、現在の電力供給量は54万キロワットと、総発電量の0・2%にとどまっている。

 活火山の地下約10キロには1000度近い高温のマグマが存在し、その地上にはしばしば温泉が湧き出ている。地熱は活火山の周辺にある熱水や水蒸気をためている「地熱貯留層」にある。ここにボーリングを行い、坑井(こうせい)(「生産井(せい)」と言う)を通じて熱水や水蒸気を取り出すのである(図)。

 地熱発電所では噴出した水蒸気の圧力によって蒸気タービンを回して電力を得る。水蒸気を取り出した後に残った熱水は、別の坑井(還元井)を通じて地下に戻す。熱水は有害な重金属を微量に含んでいることが多いため、熱のみを取り出すのである。

電力の2割の国も

 こうして地熱を発電に利用する以外に、地下の熱を直接利用する方法もある。地下からくみだされた熱水は、給湯や道路の融雪、農作物のハウス栽培や魚の養殖などの熱源として活用される。また、地表と高温の地下との温度差を用いる「地中熱」という利用方法もある。1年を通じて温度が変わらない地下の特徴を応用したヒートポンプ式冷暖房システムなどが知られている。

 地熱は地域に根差した燃料の要らない地方分散型エネルギーだが、発電には数多くの課題がある。候補地の調査から発電所の建設までに時間がかかり、膨大な初期投資が必要である。また、採掘を始めても地熱貯留層から安定して蒸気が得られないことがある。もともと採取できるエネルギー量が小さく、大規模発電に不向きなためコストが下がらない。加えて、日本では地熱発電に適した地域の約8割が、国立公園や国定公園の開発規制区域にある。温泉旅館など既存の施設が近くにある場所では、発電所の建設は事実上困難である。

 他方、海外で地熱発電を行う国は25カ国を超え、設備容量は世界で1100万キロワットに達している。実際、「火山の国」アイスランドでは国内の使用電力の2割を地熱で賄い、温水を家庭用の暖房に使ってきた。また、ドイツやオーストリアなど活火山がほとんどない国では深度4キロでの地熱開発を行っている。日本では、風光明媚(めいび)な景観や温泉文化と共存を図りつつ、地熱発電の技術開発を進めていくことが求められている。

(本誌初出 「火山の恵み」の地熱 環境や温泉文化との共存に課台/20 20200929)


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。「科学の伝道師」を自任し、京大の講義は学生に大人気。

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