「コロナ禍でアメリカのホテルの4分の1が債務不履行の危機」がなぜ「新たなサブプライム問題」につながるのか
1929年秋の米国株暴落では、11月中旬の底打ち後は124日(立会日)かけて半値戻しを達成した。だが戻り高値の後は、実体経済の悪化に伴い株価は失速する。当時の株価パターンを現在に当てはめると、今年9月に戻り高値を付けて、その後は来春に今年3月の安値を切るイメージだ(図1)。株価はさまざまな要因で動くので過去の日柄は参考程度でしかない。それに今回は各国政府・中央銀行が大胆な対策を講じており、何もしなかった大恐慌時とは違う。
とはいえ、実体経済の悪化が進行している状況は90年前と一緒だ。例えばいま、米ホテルの4分の1が債務不履行の危機にあり、その支払遅延額は206億ドル(延滞率は過去最高の23%)にのぼる。これは2008年の金融危機時(135億ドル)を上回る(8月19日の米CNN報道)。ホテルの従業員も半数が解雇され、一時は45年前の水準まで減少した(図2)。
問題は、このホテル不動産向けローンはサブプライム危機時の住宅ローンと同様、不動産担保証券として世界の投資家に売却されたことだ。債務不履行はもちろん元利払いが滞る場合でも投資家の打撃は大きく、株式市場にも当然、影響が出るだろう。米国株は9月2日をピークに急落したが、90年前の株価転換点と同様、実体経済悪化の毒が回ってきたのだろうか。
(市岡繁男・相場研究家)
(本誌初出 米ホテルが示す株反落への転換点=市岡繁男 20201006)