教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

「秒速70メートルの猛烈な風速で、時速90キロで移動」「自動車や列車すら吹き飛ばす」圧倒的な破壊力を誇る竜巻が発生する仕組みと対処法

2006年9月の竜巻で被害を受けた宮崎県延岡市の住宅街。後方では特急「にちりん」の車両が脱線・横転している
2006年9月の竜巻で被害を受けた宮崎県延岡市の住宅街。後方では特急「にちりん」の車両が脱線・横転している

 非常に強い渦を巻いた風が吹き荒れ、地上の物を巻き上げて大きな被害をもたらす竜巻。季節を問わず起きるが、特に台風シーズンの9月に多く発生する。気象庁によれば、2007~17年の平均で1年当たり23件(海上竜巻を除く)の竜巻が起きている。今年も7月に埼玉県三郷市で発生した突風が竜巻と確認されている。

 台風も竜巻も同じように大気の渦が引き起こす強風であり、キーワードはいずれも上昇気流である。地面が暖められると上昇気流が発達する。これが上空に達すると、その中に含まれていた水蒸気が水滴となり、白い雲となる。「積乱雲」の誕生である。

 上空で水蒸気が水滴になると、周囲へ熱を放出する。放出された熱は、積乱雲の周囲にある空気を暖める。この結果、暖められた周りの空気も昇り始め、上昇気流が強くなる。こうした状況で暖かく湿った空気が流入してくると、上昇気流がさらに強くなる。この時に気流は地球の自転の影響を受けて激しく回転を始め、竜巻が誕生する。こうして、らせん状に渦を巻きながら短時間に巨大な竜巻へと成長していくのである。

身を守る方法は

 竜巻は突発的に発生し、周囲には秒速70メートル以上の猛烈な風が吹き荒れることがある。特に、細長く延びた地域に短時間で被害をもたらすのが特徴である。例えば、06年9月に宮崎県延岡市で発生した竜巻は、わずか5分の間に長さ7・5キロ、幅300メートルの範囲に大きな被害をもたらした。竜巻は時に時速90キロもの高速で移動する。したがって、被害がどの方角へ広がるのか予測がかなり難しい。

 竜巻が近づいてきたときには急に空が暗くなり、雹(ひょう)がバラバラと降ってくることがある。その後、黒い雲が地面から立ち上がり、渦を巻きながら移動する。大型の竜巻が発生すると、建物の屋根や自動車が吹き飛ばされ、列車が横倒しになることもある。また、上空へ巻き上げられた物体は、通過地点に次々と落下し大きな被害を与える。そして最後に、竜巻は降雨とともに数十分で終息する。

 竜巻のように突然襲ってくる災害は、事前の避難が困難である。したがって、竜巻に襲われた際に身を守る方策を知っておく必要がある。まず、竜巻が近づくと気圧が急に下がるため、窓ガラスが割れることがある。よって雨戸やシャッターを閉め、カーテンを引いておく。2階にいる場合には階下へ移動し、机の下に潜って毛布などで頭を守る。

 また、屋外にいる場合には、近くにある鉄筋コンクリートの建物内へただちに避難する。もし車の運転中であれば、風が強くなる橋や陸橋に近づかないようにする。同時に飛来物にも注意が必要である。気象庁は竜巻が今から発生する可能性をリアルタイムで推定して「竜巻発生確度ナウキャスト」として発表しており、一人ひとりが身を守るために活用したい。

(本誌初出 竜巻発生のメカニズム 強い上昇気流と自転で成長/22 20201013)


 ■人物略歴

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

 京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。「科学の伝道師」を自任し、京大の講義は学生に大人気。

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