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トランプ氏も絶賛! ホワイトハウス専用の「大統領病院」ウォルター・リード米軍医療センターの驚くべき正体

トランプ氏の退院数時間前のウォルター・リード米軍医療センター前は支持者であふれていた(筆者の家族撮影)
トランプ氏の退院数時間前のウォルター・リード米軍医療センター前は支持者であふれていた(筆者の家族撮影)

トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染したニュースは国内外を駆け巡った。

大統領が10月2~5日に入院した病院の正式名は「ウォルター・リード米軍医療センター」で、ワシントンDC郊外のメリーランド州ベセスダにある。

ホワイトハウスから約15キロメートル、車で20分、ヘリコプターだと、わずか5~6分で到着可能な立地だ。

大通りの対面には、有名なファウチ博士が所属している米国立衛生研究所がある。

軍関係者向けが起源

歴史は古く、1909年に軍関係者向けの医療施設として「ウォルター・リード総合病院」の名でワシントンに開業。

病院の名は黄熱病が蚊によって伝染することを突き止めたリード少佐にちなむ。

隣には陸軍医療センターがあり、第1次・第2次世界大戦や、ベトナム戦争で負傷した兵士の治療に使われたが、この間、需要増に対応し51年に両施設を統合し「ウォルター・リード陸軍医療センター」に改名。

その後も幾度か改装が繰り返され、11年に現在の場所にあった海軍病院と統合した。

約1キロメートル四方の広大な敷地に100以上の診療所があり、約7000人の医療スタッフが勤務する、世界最大の軍関係者の病院だ。

自然豊かな場所で、敷地内をシカが走り回っているのを筆者は何度も見たことがある。

患者は原則として、現役・退役軍人とその家族となっており、最先端の医療設備とトップクラスの医師がそろっている。

筆者の知り合いの軍従事の家族も通院しているが、特に大きな手術を伴う病気・ケガの際は心強いと聞く。

ただ、戦争で負傷した兵士が患者として多数いる中、軽い症状で通院するのははばかられるとも聞く。

さて、この医療センターは南北に分かれている。

北部は一般軍関係者が通院する施設で、国防総省の管理下だが、南部は通称「大統領病院」と呼ばれ、ホワイトハウスの管理下にある。

トランプ大統領はこの施設に入院した。

歴代大統領が定期健康診断を含め通院しているが、現職大統領の入院は、81年にレーガン大統領が銃弾に倒れた際以来39年ぶりだった。

「大統領病院」内の大統領スイートと呼ばれるエリアには、集中治療室の他、寝室、風呂、キッチン、豪華なリビングルームが備わっている。

また、大統領の職務遂行を可能にするため、機密が確保されている会議室や大統領首席補佐官の部屋も用意されており、同医療センターの人間すら立ち入ることができない、正に第2のホワイトハウスになっている。

治療に当たるホワイトハウスの医師団の宿泊部屋も用意されている。

彼らで対応できない病状に備え、事前身元調査済みの同医療センターの医師団も待機している。

ニクソン、ケネディ、レーガンをはじめとする歴代大統領が治療を受けたほか、アイゼンハワー大統領と婦人は人生の最期をこの病院で迎えた。

この施設、現職・元大統領の他にも、副大統領、連邦議員、最高裁判事、そして許可が得られれば外国の軍関係者や大使館職員も、大統領が使用してない時に限り利用できる。

ただし、大統領スイートは大統領専用で、いかなる緊急時にも対応できるよう、通常は使用されてない。さすが「大統領病院」だ。

(中園明彦・伊藤忠インターナショナル会社ワシントン事務所長)

(本誌初出 現職入院の「大統領の病院」 機密確保された会議室も=中園明彦 20201110)

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