コロナ第3波で大混乱のイギリス・マンチェスターで「反乱発生」の衝撃
英国北西部に位置し、人口が3番目に大きなマンチェスター大都市圏(人口約280万人)のバーナム市長は、10月12日から21日まで10日間にわたり、ジョンソン首相の悪評高い新型コロナ感染拡大阻止の3段階規制に反対した。
英メディアを巻き込んで徹底抗戦したが、強制力を持った政府の最後通牒(つうちょう)には逆らえず、“マンチェスターの反乱”は失敗に終わった。
だが、英国メディアは、バーナム市長は3段階規制という特定地域に限定したローカル・ロックダウン(来年4月までの最長6カ月間の都市封鎖)の問題点を浮き彫りにし、全国一斉のサーキットブレーカー・ロックダウン(2〜3週間の短期都市封鎖)への道筋を付けたと論じている。
10月12日からスタートした3段階規制とは、イングランドを感染率に基づいて、三つの地域に指定するもの。
最も規制が緩い第1段階の「ミディアム」は、イングランドの大半の地域が指定され、7人以上の集会禁止(6人ルール)と午後10時以降のパブやレストランの営業が禁止される。
やや規制が強い第2段階の「ハイ」は、別世帯との屋内外での交流が禁止される。
最も厳しい第3段階の「ベリー・ハイ」はパブやバーが閉鎖され、経済への悪影響は第3段階が最も大きい。
第3段階地域はイングランド北部に集中しているため、南北間対立が新たな火種となり、最大野党の労働党と与党・保守党の議員を巻き込んで政治問題化してきている。
そのきっかけがマンチェスターの反乱だ。
政府からの一方的な第3段階への指定替えが発端となった。
マンチェスター大都市圏は当初、第2段階に指定されるはずだった。
バーナム市長は「政府はマンチェスターを実験的な3段階のローカル・ロックダウン戦略を試す、炭鉱のカナリアにしている」(10月15日付、英紙『デーリー・テレグラフ』)と猛反発した。
最終的にはジョンソン首相が協議を打ち切り、強制執行した。
ジョンソン首相は10月20日の会見で、北部のサウスヨークシャーなども第3段階への移行について協議を行う方針を示した(10月23日までにサウスヨークシャーとウォリントンは第3段階に移行)。
これに対し、労働党のスターマー党首は「公正な方法として全国一律の短期都市封鎖が効果的だ」(10月20日の英放送局「スカイニュース」)と主張する。
背景に政治的確執
バーナム市長は労働党の影の内閣で保健相を務めた経歴があり、反乱の背景には政権与党の保守党との政治的な確執がある。
労働党のスターマー党首はSAGE(政府緊急時科学諮問グループ)が9月21日の会合で決定したものの、ジョンソン首相によって無視された全国一斉の短期都市封鎖の導入を主張している。
SAGEは提言で、短期都市封鎖を実施すれば「Rレート」(感染者1人から感染する人数)は1以下に引き下げることができると主張している。
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)の最新調査で、「6人ルールと午後10時以降の飲食店の営業禁止が義務化されたものの、規制前に比べ接触者数が減少した効果はみられていない」(10月25日付『テレグラフ』紙)と結論付けている。
今年6〜8月の失業率は4・5%と、3〜5月の4・1%から急上昇した。
失業者の拡大は今後も避けられそうになく、景気の悪化が懸念される。
(増谷栄一・国際経済ジャーナリスト)
(本誌初出 英が3段階のコロナ規制導入 マンチェスターの“反乱”は失敗=増谷栄一 20201117)