中国の高級ファッションブランドがぞくぞく日本に進出している驚きの理由
中国の高級アパレルブランドの日本進出が増えている。
日本のアパレル市場は、少子高齢化やビジネスモデルの転換の遅れに新型コロナウイルス禍が重なり、かつてない厳しさだ。
それでも日本を目指すのは、自分たちの製品に自信を持っているからだ。
中国を代表する高級レディース「アイシクル」は、2021年9月に日本1号店を大阪の大手百貨店に出店する。
続いて東京にも進出し、数年間で両都市にそれぞれ2、3店を設ける計画だ。
同ブランドのデザイン拠点はフランス・パリと上海にあるが、日本ではパリでデザインした製品を訴求する。
カシミヤやシルクといった中国産高級原料やエコへのこだわり、自社工場の高品質の縫製も強みとして打ち出す。
特徴は「欧州のラグジュアリーブランドと同等の品質だが、値段はその半分」というコストパフォーマンスの良さ。
運営する上海之禾時尚実業(集団)の葉寿増・最高経営責任者(CEO)は、日本市場はこの10~15年で消費の二極化が進み「ラグジュアリーとボリュームゾーンの中間が空白になっている。そこを埋める」と言う。
高級メンズ「単農(ダンノン)」は今年1月、東京・南青山に海外初の店舗を設けた。
東洋の伝統文化を意識したシンプルなスタイルと上質の素材が特徴で、本国では文化人やアーティストから支持されている。
1号店の運営はコロナ禍の影響もあり芳しくない模様だが、プロモーションを強め、百貨店やセレクトショップ向け卸事業拡大の足掛かりとしていく。
これから進出を狙うブランドも多い。
ブティックなどへの卸売りを手掛ける高級レディース「フレーム・ファン」は、目利きの消費者が多い東京か香港に1号店を出してから大陸で出店する構想を持つ。
ネット通販専業の高級レディース「D家」も、日本での販売を模索。
中国ではトレンドをいち早く取り入れた商品を高いコストパフォーマンスで、短サイクルで提供するモデルで成功したが、「日本でも通用する」と運営する上海遞加時尚の呉軍総経理は話す。
こぞって日本を目指す背景には、中国での厳しい競争の中で品質やデザイン力、ビジネスモデルを磨いてきた自負がある。
また、中国国内の成長余地が限られてきていることもある。
高級ブランドは昨年から景気後退や主要販路の百貨店の低迷などで伸び悩み、アイシクルの葉CEOは国内店舗について「現在の店舗数(271店)から大きく増えていかない」と言う。
こうした中、「チャイナ・プラスワン」として日本市場が注目を集めている。
管理者が成否のカギ
ただ、日本進出は一筋縄ではいかないだろう。
高級レディース「リード・ミー」を展開する上海無限服飾は、16年に日本に子会社を作り、日本のブティックなどへの卸売りを強化したが、19年に撤退。
「数百万円の未回収金がある。良い人材を採用できなかったことが敗因」と孫偉新総経理は話す。
中国で失敗した日本ブランドの多くは、製品やビジネスのローカライズ(現地化)でつまずいた。
成功するには、両国を理解する優秀なトップ人材が必要だ。
中国ブランドの日本進出も同様で、優秀な管理者を置けるかどうかが成否を左右する。
(岩下祐一・「繊維ニュース」上海支局長)
(本誌初出 高級ブランドが続々と日本進出 品質に自負、国内市場伸び悩みも=岩下祐一