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教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

人間はどうして希望を持てるのか 三木清の思想に学ぶ「生きづらさへの対処法」

三木清
三木清

 Q 人生に希望が持てません。打破する方法はありませんか?

 A 人生で断念するものを明確にし、それを推進力に希望の形成を

 経済の低迷からか給料は下がる一方で、仕事はうまくいきません。おまけに家族との関係もぎくしゃくしてきて、人生に希望が持てません。一体どうすればいいでしょうか?

(営業職・40代男性)

問題が重なると生きるのがつらくなりますよね。

人生とは何と虚(むな)しいものなのかと落ち込みます。

日本の哲学者・三木清によると、人間という存在はそもそも虚無の中に生きていると言います。

でも、その混沌(こんとん)とした虚無の中で、なんとか希望を見いだしながら生きるのが人間なのです。

三木の言葉で言うと、希望を形成しながら生きるのが人間なのです。

その意味で、生きるということはイコール希望を持つことだとも言います。

実は三木自身が、家族との死別、仕事での挫折、戦争という自分の力ではどうにもできないものに翻弄(ほんろう)されながら、虚無の中であがいてきた哲学者でした。

だからこそ『人生論ノート』というエッセーの中で、希望について力強い言葉を残すことができたのです。

ロゴスとパトス

では、一体どうすれば、人は希望を形成することができるのか?

それは三木の思想の根本にある構想力という概念に着目するとよく分かるでしょう。

もともとはドイツの哲学者カントが提起したものを、三木が発展させました。

三木の言う構想力は、ロゴス(論理的な言葉)とパトス(感情)の根源にあって、両者を統一し、形をつくる働きだと説明されています。

つまり、人間が時に理屈で考えながら、時に感情に任せて何かを求める行為、それこそが構想力にほかならないのです。

したがって、希望を形成する時も、私たちはまず感情に任せて突き進むと同時に、理屈で考えて現実的になっていくのだと思います。

「理屈で考える」とは、自分自身が置かれた立場から人生で何を選び、何を選ばないかを熟考する行為。

あくまでもポジティブで、前に進むための行為です。

そのことを三木は「断念」という逆接的な言葉で表現しています。

「断念することを本当に知っている者のみが、本当に希望することができる」と。

たしかに、追求してもとうてい無理なものを断念することでしか、私たちは前に進むことができません。

希望を単なる理想として終わらせるか、生きるための推進力として生かすかは、まさに断念できるかどうかにかかっているのです。

相談者もぜひ、視点を変えて、何を断念できるか考えてみてはいかがでしょうか。

希望を実現するために。

(本誌初出 人生に希望が持てません。打破する方法はありませんか?/57 20201124)

(イラスト:いご昭二)


三木清(1897〜1945年)。日本の京都学派の哲学者。不遇の人生を送りつつも、「構想力」の哲学を樹立。『人生論ノート』は終戦直後のベストセラーに。


【お勧めの本】

三木清著『人生論ノート』(新潮文庫)

ベストセラーになった珠玉のエッセー集


読者から小川先生に質問大募集 eメール:eco-mail@mainichi.co.jp


 ■人物略歴

おがわ・ひとし

 1970年京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部教授(公共哲学)。20代後半の4年半のひきこもり生活がきっかけで、哲学を学び克服。この体験から、「疑い、自分の頭で考える」実践的哲学を勧めている。

「小川仁志の哲学チャンネル」

https://www.youtube.com/channel/UC6QhXJZtGm7r287kam1Z1bg

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