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教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

意外と知らない?火山大国日本にダイヤモンドが産出しない理由

地球深部の超高圧・高温の環境下でできるダイヤモンド (Bloomberg)
地球深部の超高圧・高温の環境下でできるダイヤモンド (Bloomberg)

その輝きで人々を魅了するダイヤモンドは、世界中で最も高価な鉱物資源である。

ダイヤモンドは炭素からなり、鉛筆の芯を作っている黒鉛(石墨)と同じ元素でできている。

ダイヤモンドと黒鉛は物質的には全く同じだが、結晶構造が違う。

黒鉛の炭素原子は、雲母のように層状に配列している。

層と層の間の結合が弱いので、薄板状に剥がれたりする。

それゆえ黒鉛は柔らかく、すべすべした感触を持つ。

一方、ダイヤモンドは、炭素原子は互いに連結した網状の組織の中に詰め込まれている。

そのため、地球上で知られる限り最も硬い物質となっている。

ダイヤモンドは世界中で特殊な地質に産出する。

ダイヤモンドのように炭素原子を緊密に詰め込むには、非常に高圧で高温の環境下でなければならない。

すなわち、大陸の地下200キロで、温度は溶岩と同程度という特殊な場所で形成されたのだ。

ダイヤモンドには二つの成因がある。

地球のマントル深部で何千万年という長時間をかけて炭素が変化したダイヤモンドと、プレートがマントルに沈み込む際に地球表面にある物質が深部に運び込まれてできた超高圧の変成岩としてのダイヤモンドだ。

こうして深部でできたダイヤモンドは、火山活動によって地表付近に戻ってくることがあり、人間はそれを採掘してきた。

もし、人間が200キロの深さまで掘ることができたならば、ダイヤモンドは珍しいものではなかっただろう。

しかし、実際に人類が掘ることができるのはせいぜい地下11キロまでだ。

一気に地表へ

地下深くからダイヤモンドを地表近くまで運んでくれたのが、「ダイアトリーム」と呼ばれるラッパのような形をした形態の噴火口である。

この噴火口による噴火は、地下深くにある物質が地表に噴出するまでの圧力と温度の低下があまりにも急激なことが特徴で、ダイヤモンドはキラキラ輝いたまま地上にもたらされた。

ダイヤモンドは通常の噴火では真っ黒な黒鉛に変化してしまうが、その時間的余裕がないほど地表へ一気に速く噴き上がったのだ。

残念ながらダイアトリームは、南アフリカのような古い大陸地殻があるところでしか見つかっていない。

日本には活火山が111個もあるが、ダイアトリームはないので、日本ではダイヤモンドは産出しない。

ダイヤモンドは、いったん網状組織の形が形成されれば、低圧・低温下でも安定を保つ。

地下深部から上がってきても分解しない。

しかし、高熱には弱いので、火にくべれば燃えてしまう。

こうした性質をもつダイヤモンドを人間が手の届くところへ運んできてくれたのも「火山の恵み」の一つと言えよう。

(本誌初出 ダイヤモンドの輝き 特殊な噴火口が運んだ偶然/28 20201124)


 ■人物略歴

鎌田浩毅 かまた・ひろき

 京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。「科学の伝道師」を自任し、京大の講義は学生に大人気。

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