人手不足による手抜き工事が多発中という不動産業界の闇について
建設業界は、恒常的な人手不足で、現場の人員確保に苦心している工務店が多く、新築現場では「工期が遅れる」「工事が雑になる」といった事例が多発している。
ある新築4棟の現場では2人の大工しか確保できなかったとか、現場監督が15棟もの現場を掛け持ちしているといった事例があり、通常3カ月程度で終わる工事が6カ月以上かかったり、急ぐあまりいい加減な工事やミス、またはミスの見逃しといったパターンが増えている。
横浜市での新築住宅の建築現場の事例を紹介しよう。
耐震性を確保するための2本の「筋交い」がきちんと交差せず、片方が途中で切られていて必要な耐震性を確保できていない(写真1)。
さらに、アンカーボルトを固定するために筋交いを欠き込んでしまい、やはり想定した耐震性は確保できていない(写真2)。
こういった雑な工事が、設計の意図とは離れて現場ではよく起こっている。このままボードを張ってしまったらもうわからない。
次に紹介するのは、千葉県市川市の新築現場。
ホームインスペクター(住宅診断士)が現地を訪れると……。写真3は2階のルーフバルコニー部分。
バルコニーの排水は一般的に「排水管」と、万一水がたまったときのために一段高い位置に「オーバーフロー管」が付いている。
ここは、排水口が同じ高さに2カ所付いていて、いずれの排水口も一つの配管に水が流れる仕組みになっている。
オーバーフロー管をいまから取り付けるのは現実的になかなか難しく、排水口が詰まらないよう定期的に清掃をするようアドバイスした。
写真4は1階の外回り部分。
北東側に設置された給湯器の配管貫通部に隙間(すきま)が。給湯器だけでなくエアコンの配管なども建物に穴をあけているわけで、雨が降ればそこから雨水が建物内部に浸透しかねない。
コーキング処理(隙間の充填(じゅうてん))が適切に行われていない例はよく見られる。
建物の工事現場は、工務店によって、また現場によってその品質に大きなばらつきがあるのが実情だ。
現場監督の適正な管理戸数はせいぜい7~8現場であり、それ以上となると満足にチェックできていないはず。
工事や管理に不安がある場合には、多少のコストがかかっても、第三者の建築士やホームインスペクターに現場チェックを依頼することを勧める。
(本誌初出 人手不足で施工ミスが相次いでいる/75 20201222)
■人物略歴
長嶋修 ながしま・おさむ
1967年生まれ。広告代理店、不動産会社を経て、99年個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」設立