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トヨタ中心の「オールジャパン」がFCVに全力投球する一方ホンダが独自路線を歩んでいる理由

    いち早く市場に投入されたトヨタのミライ (Bloomberg)
    いち早く市場に投入されたトヨタのミライ (Bloomberg)

    トヨタ自動車や岩谷産業などは12月7日、「水素バリューチェーン推進協議会」を設立した。

    自動車や発電など水素ビジネスを促進するための規制緩和や政策の提言、社会実装の提案などを行う。

    会員はENEOS、関西電力、東芝、川崎重工業も含む全80社余りだ。

    水素の事業化がいち早く期待されるのは、燃料電池車(FCV)だ。

    燃料電池は、水素と酸素の化学反応によりエネルギーを生み出し、排出されるのは水だけ。日本勢は世界でもいち早くFCVを事業化した。

    FVCの市場投入としては、トヨタ自動車が2014年に「ミライ」を740万円相当で、ホンダも16年に「クラリティ」を同等価格で果たした。

    ただ、普及は進まず、ミライでさえも世界累計販売数は20年9月時点で累計1万1000台にとどまる。

    クラリティは20年10月時点での国内登録台数が260台に過ぎない。

    電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)に比べて相対的に高い価格や水素ステーションの不足などが影響した。

    00年代以降、FCVは何度かブームを迎えながらも爆発的な普及に至らなかった。

    トヨタが主導する形で協議会が設立されたのは、EU(欧州連合)が今年7月に「水素エネルギー戦略」を公表するなど、世界的に水素が脚光を浴びたタイミングであった。

    FCVを中心に水素ビジネスを先駆けて主導してきた日本勢にとって、水素エネルギーで他国の後塵を拝すことは屈辱となる。

    FCVの本格的な市販に至ったのは、トヨタ、ホンダの日系2社と、韓国の現代自動車のみである。

    後発メーカーとしてはFCVの技術をいち早く取り込みたいところである。

    FCVはEVより部品点数が多く、部品の共有化がコスト競争力に直結し、メーカー同士の協業が量産・価格の鍵を握る。

    後発メーカーのうち、独BMWはトヨタ、米ゼネラル・モーターズ(GM)はホンダと協業し、独ダイムラー、米フォード・モーター、日産自動車はアライアンスを構築した。

    なお日産は18年にFCVの開発凍結を明らかにしている。

    先行メーカーのうち、トヨタは20年12月に新型ミライを投入し大量増産する計画だ。

    BMWにはFCVの心臓部分であるFCスタック(発電装置)を供給するなど、協業関係を優位に進めている。

    一方、ホンダはGMと次世代スタックの開発・生産を共同で行う。

    トヨタとは異なり、対等の協業で次世代スタックを搭載した次期FCVモデルを両メーカーが20年にも発売する計画だった。

    しかし、次期モデルの市場投入は見直しがかかり、発売時期は未定だ。

    ホンダは今回の協議会に入っていない。主導権をトヨタが握っているからであろう。

    さらには、ホンダはGMとFCV事業でがっぷり協業しており「オールジャパンで対応したい」との協議会の路線とも異なるのではないか。

    再度動きが加速している「水素社会」だが、今度こそ実現させるには、FCVの価格低減、二酸化炭素を排出しない水素製造プロセスの確立、水素ステーション拡大など課題は多い。

    (佐藤登・名古屋大学未来社会創造機構客員教授)

    (本誌初出 水素事業で協議会 トヨタ主導オールジャパン 燃料電池車技術で巻き返し狙う=佐藤登 20201222)

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