経済・企業注目の特集

音声で世界とつながる SNS疲れとコロナ禍が追い風 クラブハウスは大化けするか=笹木郁乃

著者のルーム
著者のルーム

 SNS(交流サイト)上で、米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)と火星事業について議論したい――。そんな願いをかなえるのが、招待制音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」だ。

 クラブハウスは、米国サンフランシスコのベンチャー企業アルファ・エクスプロレーション社が2020年春に立ち上げたアプリだ。資金調達に成功したことにより、1億ドル(約100億円)の企業評価額が付けられ、現在はそれを超えたとされている。

 具体的には、音声を使って人とつながることができ、ラジオのように音声を一方的に聴かせるのではなく、会話を通してコミュニケーションをとっていく。

数週間で50万人

 アップルストアの総合ダウンロード数で連日1位を記録。ソーシャル分析ツールを手がけるユーザーローカルの伊藤将雄社長の独自の試算によると、2月4日時点で日本のユーザー数は50万人程度という。同じ招待制のmixi(ミクシィ)が1年かけて獲得したユーザー数をたった数週間で、クラブハウスは取り込んだことになる。

 この急浮上の背景には、二つの追い風が重なったと考えられる。

 一つが、綿密に作り込むSNSに発信者側も視聴者側も疲れてきたということ。インスタグラムは写真映え、YouTubeは奇麗に編集された有料級コンテンツ、ツイッターでは響く言葉が重視される。

 それらとは逆をいくのが、クラブハウスだ。雑談・その場の偶然な出会い、会話を楽しめるため、これまでのSNSにはなかった臨場感と飾りっ気のないリアルが味わえる。

 もう一つはコロナ禍の影響だ。友人との飲食が自粛されている中で、偶然の出会い・広がり・雑談を楽しむ場がなくなった。クラブハウスはそれを気楽に実現できる。

 そんな時代背景も、今このタイミングで、「井戸端会議に誰でも参加できますよ」というクラブハウスは求められているツールだったのかもしれない。

 特徴を挙げると、まず現在はiOSのみで利用可能。つまり、iPhoneかiPadがないと聴けない。次に完全招待制で、初期は1人2枠まで招待できる。そして招待には電話番号が必要で、実名制となっている。また、アーカイブ録画機能はなく、さらにコメントやイイね機能もない。

 完全招待制やコメント機能がないことから、炎上が起こりづらいメリットがある。また、アーカイブ録画機能がない上に、規約として「メモ・録音禁止」としているため、「無責任な発言はできない」というほどよいプレッシャーもあり、スピーカー側を不快にすることはなく、楽しめる。

河野行革相も利用

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 実際に使ってみると、確かに面白い。クラブハウスは、ユーザーが自由にテーマを設定し井戸端会議部屋(ルーム)を作り、そこでしゃべることができる。そのユーザーの話を聴きたい人は、ルームに入って聴くことができる仕組みだ。

 著名人や有名経営者の井戸端会議を聴けるし、手を挙げて、その場で質問や会話に参加できる。ルームには「オープン」「ソーシャル」「クローズド」の3種類があるが、国籍に関係なく、さまざまなルームに出入りできる。

 日本では渡辺直美、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅ、「ZOZO」創業者の前沢友作氏、河野太郎行政改革担当相などタレントから経営者、政治家まで積極的に利用。例えば、人気タレントがルームを開き、さらに有名タレントが参加し、“豪華な”ルームになることもある。

 また、企業経営者も多く活用している。「初めてお会いできて光栄です」「よかったら、今度お会いしませんか?」といった会話で、ビジネスの出会いの場にもなっている。

 クラブハウスは一時期、サーバーダウンが問題視されていた。しかし、新しい資金調達ラウンドを準備していることが確認されており、より安定度が高まることが期待されている。

 また、現時点でクラブハウスは無料ツールだが、今後はマネタイズ(収益化)が課題となるだろう。その方法として、(1)有料会員制、(2)リスナーがスピーカーにお金を投げる投げ銭システム、(3)企業がルームに出資しルーム自体で企業商品について語る、(4)企画するルームのチケットを有料販売――の四つが有力視されている。

 さまざまなSNSで、「クラブハウスに招待してください!」「クラブハウス入りたい~~誰か~」という投稿が相次ぎ、まるで予約が取れない「名店」を思わせるブランドイメージが定着した。

 また、クラブハウス内でコメントできないため、「今聴いているクラブハウスのイベントが熱い!」「明日、クラブハウスでこんな企画します」といった投稿が他のSNSで多く見られる。

 一過性のブームと冷ややかな目で見る人もいる。だが、クラブハウスは、SNS上で大きな話題となっているのは確か。ブームを急速に作ることに成功したと感じる。

(笹木郁乃・LITA代表)

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