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世界的な半導体不足 減産相次ぐ自動車メーカー 曲がり角に来た調達体制=津田建二

車載半導体の供給が追い付かない (Bloomberg)
車載半導体の供給が追い付かない (Bloomberg)

 半導体が世界的に不足し、トヨタ自動車やホンダ、米フォード・モーターや独フォルクスワーゲン(VW)といった世界の自動車メーカーが次々に減産に追い込まれている。これを受けて独米日の各国政府が台湾当局に車載半導体の増産を要求し、世界トップの半導体受託製造メーカーTSMC(台湾積体電路製造)は1月28日、生産能力を見直し車載関連の半導体を迅速に生産していると説明した。

 半導体不足の一因は、新型コロナウイルスの影響でいったん落ち込んだ自動車の生産が急回復し、車載半導体の供給が追いつかないためだ。自動車メーカー各社は昨年3~4月ごろ、コロナ禍の影響で生産ラインを止め、車載半導体メーカーは大打撃を受けた。しかし、中国などでの自動車販売が急速に回復したこともあり、5月以降は車載半導体の需要も徐々に伸び、10~12月に急激な供給不足に陥った。

二重三重の発注

 急激な供給不足となったのは、半導体メーカーから車載半導体を買い付けるバイヤー(販売代理店や商社)が旺盛な需要を見込んで二重、三重に発注していたことが拍車をかけたと見られる。実は、こうした二重、三重の発注は半導体の世界では常態化している。供給が落ち着いてくると、今度は在庫の増加が目立つようになり、需要が急激に落ちる循環を繰り返している。

 2017~18年のメモリーバブルの時もそうだった。世界半導体市場統計(WSTS)によると、世界のメモリー半導体市場は16年まで年平均数%ずつ拡大したが、17年には前年比61・5%増、18年は27・4%増と急激に伸びた後、19年は32・6%減と大きく落ち込んだ。車載半導体メーカーは現在、二重、三重の発注をやめるようバイヤーに嘆願している。生産量も増やしているが、まだ需要に追いつかないのが現状だ。

 半導体は設計完了後、材料のシリコンウエハーを投入し、組み立てや検査を経て出荷するまでに最低でも4カ月程度かかる。自動運転や電気自動車(EV)へのシフトで、車載半導体の需要は今後ますます増えると見込まれるが、車載用半導体を製造できる工場は自動車メーカーの認定を受けなければならないため、世界でも数が限られている。

 今回の問題は、自動車メーカー自身にもある。これまで、必要な時に必要な分だけ作る「ジャストインタイム方式」で在庫を持たない経営を信条としてきたが、半導体生産ではどんなに頑張っても数カ月は要するため、この方式での調達はもはや難しくなっている。半導体がなければ自動車生産はままならず、現在のような事態を避けるには自動車メーカーも今後、一定程度の在庫を安定して確保する必要があろう。

 TSMCのほか、韓国サムスン電子などの半導体メーカーは現在、今後の需要増加に備えて米国などで工場拡張を進めているが、それでも急激な供給増には対応できない。自動車メーカーの生産モデル自体が大きな曲がり角にある。

(津田建二・国際技術ジャーナリスト)

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