「バブル期日本のDCブランドブームを彷彿」中国で国産アパレルが大人気な理由
中国では“国潮(グオチャオ)”と呼ばれる国産ブランド熱のトレンドが盛り上がりを見せている。
一方の外資は、欧米のファストファッションを中心に撤退が続く。日系ブランドは、現地企画商品の強化で勝ち残ろうとしている。
国潮が盛り上がる背景には、品質とデザイン性を高めた地場ブランドへの評価が高まっていることや、消費者が自国に自信を深めていることがある。
その様子は、「1980年代の日本のDCブランドブームをほうふつとさせる」(日本のアパレル関係者)。
筆頭格は、スポーツブランド大手の「李寧(リーニン)」だ。
84年のロサンゼルス五輪などで活躍した体操選手の李寧氏が立ち上げたブランドで、近年ストリートファッション寄りのラインを打ち出し、若者に受け入れられている。
「リーニンは中国人にとっての初めてのナショナルブランドになった」と、ある地場ブランドのトップは評価する。
ダウンウエア最大手の「波司登(ボストン)」も、国潮の代表ブランドだ。
2015年から始めたブランドの再構築(リブランディング)が功を奏し、若返りと高級化に成功。
従来は地方都市でのシェアが高かったが、海外ブランド好きで目利きが多い上海などの都市部でも、ボストンを着る人の姿を頻繁に見かけるようになった。
国潮トレンドは広がりを見せ、新興ブランドが次々に登場している。
レディースインナーでは「内外」「Ubras」、ホームウエアでは「蕉内(バナナイン)」、高級スポーツウエアでは「パーティクル フィーバー(粒子狂熱)」「マイア アクティブ」など、海外の著名ブランドと比べても遜色のない、デザインと機能性を追求したニューフェースが売り上げを伸ばす。
日系は「現地化」加速
この影響で、割を食っているのが外資ブランドだ。
18年から「フォーエバー21」「トップショップ」「ニュールック」「オールドネイビー」など、欧米ファストファッションが相次いで撤退。
今年1月末には、「ザラ」を運営するスペインのインディテックスが、「ベルシュカ」など3ブランドの実店舗を閉鎖したもようだ。
日系ブランドは、盤石なのは「ユニクロ」くらいで、「無印良品」など中国で存在感を示しているブランドも地場ブランドの追い上げにさらされている。
こうした中、各ブランドが現地企画商品を強化している。
日本などグローバルで展開する商品に現地ニーズに応える商品を加え、地場ブランドに対抗しようとしている。
オンワードが展開する「23区」と「ICB」は、20~21年秋冬から現地企画品を投入。
「現地企画品のデザイン数は全体の4割だが、売上比率は5割を占める」と、オンワードと提携する現地アパレル企業の上海贏裳恩服飾の徐偉文副総経理は話す。
「アシックス」も東レグループと協力し、20~21年秋冬から重衣料やランニングウエアの現地開発に乗り出した。
先行するランニングシューズの現地企画品で成果を上げている。「ミズノ」もライフスタイル商品の現地企画を増やした。
これまでは数%の売り上げ構成比だったが、20年は3割弱になった。「現地化」を加速させて活路を探る動きが続いている。
(岩下祐一・「繊維ニュース」上海支局長)
(本誌初出 国産ブランド熱で外資苦戦 欧米系アパレルの撤退続く=岩下祐一 20210316)