揺るがない企業業績の強さ S&P500は年内に最高値更新へ=編集部
揺るがない企業業績の強さ 株価は年内に過去最高更新=神崎修一/斎藤信世
足元で米国の株式市場が揺れている。米国の代表的な指標であるS&P500株価指数は9月、月間ベースで8カ月ぶりに下落(4・8%)に転じた。下落幅は「コロナショック」といわれた2020年3月(12・5%)以来の大きさとなった。(今こそ買う!米国株 特集はこちら)
特に最終週(9月27日〜10月1日)は大きく乱高下した。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「米国政府の債務不履行(デフォルト)の懸念や供給制約解消の遅れに加え、『中国恒大集団』の債務不履行問題もあり、リスクオフの動きがでている」と説明する。さらに米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策変更も意識されたことで長期金利の上昇もみられ、さまざまな悪材料が重なっている状態だ。
しかし、株式相場はじきに落ち着きを取り戻すとの見方が市場関係者の間には根強い。根拠となるのが米国の企業業績の強さだ。調査会社リフィニティブの集計(9月時点)によると、S&P500構成企業の1株当たり利益(EPS)は、21年で前年比43・9%増と予想されている。さらに成長は続き、22年も9・6%増、23年も7・3%増。市場は米国企業が着実に利益を積み上げていくとみている。
図はS&P500の株価と構成企業の12カ月先の予想EPSを示したものだ。企業の「稼ぐ力」が上昇すると予想される間は、将来への期待から株価が上昇していくことを示している。米国市場に詳しい三菱UFJ国際投信の荒武秀至チーフエコノミストはS&P500は徐々に回復し、年末までに過去最高の4600ポイントを目指すとみる。良好な業績のモメンタムが崩れない限りは、米国株の強さは揺るがないといえそうだ。
GAFAは2ケタ増益
そうなれば、適度に下がった今の株価水準は長期的な視点からみれば「投資の好機」とみることもできる。実際、米国を代表するIT企業「GAFA」(アルファベット=グーグルの親会社、アップル、フェイスブック、アマゾン)の業績は引き続き強い。21年4〜6月期決算では、4社いずれもが2桁以上の増収増益を確保した。コロナ禍でデジタル関連の製品やサービスへの需要がさらに高まったが、長期的な視点からみてもDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが止まるとは考えにくい。
バイデン政権が経済成長の柱に据える「脱炭素」政策も注目だ。電気自動車(EV)の普及や再生可能エネルギーを確保する動きが加速することは間違いない。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の新井洋子チーフ・グローバル投資ストラテジストは「小売りの中でもEコマースに力を入れるとか、自動車も製造よりもサービスに変わるなど、新しい切り口の企業が注目される」と語る。
独自の技術やサービスを武器に右肩上がりで成長する企業が米国には多い。目先の波乱要因を消化し終えれば、これらの新技術でリードする米国企業が株式市場で勢いを取り戻す可能性は高い。
(神崎修一・編集部)
(斎藤信世・編集部)