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米雇用統計 失業率試算は10%も 経済悪循環の瀬戸際=鈴木敏之

人影もまばらなニューヨーク市街。雇用は急速に悪化している
人影もまばらなニューヨーク市街。雇用は急速に悪化している

 米労働省が4月3日に発表した3月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比で70・1万人減り、9年半ぶりに減少に転じた。減少幅も、リーマン・ショック後の2009年3月(80万人減)以来11年ぶりの大きさだった。失業者は714万人、失業率は4・4%で前月比0・9ポイント悪化した。ただ、集計が3月8〜14日で、新型コロナウイルスの感染拡大による主要都市の外出禁止で雇用削減が本格化する前のため、実態はさらに悪化していると見られる。

失業保険申請は10倍

 実際、毎週公表される失業保険の新規申請件数はその後、激増した。3月20日までの1週間で330・7万件、3月27日までの週で664・8万件も増えた。それまでの最高はリーマン・ショック後の09年3月27日までの週の66・5万件だったが、その10倍もの申請があったということになる。

 こうした失業保険の申請急増に経済分析者たちが驚愕(きょうがく)する中で、今回の雇用統計は発表された。失職していても職探しをしなかった人は失業者には数えられない。新型コロナの感染が広まる中で、職探しどころではなかったと考えられる。その動きが表れたのが労働参加率で、2月の63・4%から62・7%に低下した。

 こうした事情を勘案し、より実態に近い形で米国の失業率を試算してみよう。3月の週次の新規失業保険申請件数の累計から、雇用統計で公表されている一時解雇(レイオフ)の数を差し引いた数字を失業者数714万人に加えると、3月の失業者数は1574万人。これを3月の労働力人口で割って失業率を計算すると、9・7%となる。今後、さらに悪化することも見込まれ、10%は通過点に過ぎなくなるかもしれない。

 この先の深刻な事態は、新型コロナウイルスの感染拡大が終息せず、一時的に離職した人々が、復職の見込みを失うことである。彼らは自動車は買わない、家は買わない。そうなると消費は落ち込み、次の雇用調整を引き起こす。住宅ローンの返済も滞る。また、今の情勢だと、売り上げの立たない企業の運転資金確保の問題も起きてくる。

 米国は財政・金融政策をフル投入して、事態の悪化を食い止めようとしているが、感染拡大が長期化する場合、財政・金融政策の火力がどこまであるのかという問題に直面する。今、財政の膨張は政治的にいくらでも容認されそうだが、市場は無限に国債発行を消化できるわけではない。それは、株式など他市場にも影響しよう。

(鈴木敏之・三菱UFJ銀行シニアマーケットエコノミスト)

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