アップルとグーグルの手数料ぼったくり商売に反旗? 「フォートナイト」エピックゲームズの提訴はGAFA帝国崩壊の前触れなのか
世界的にヒットした人気ゲーム「フォートナイト」運営元の米Epic Games(エピック・ゲームズ)が8月14日、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に対し、「アップルとグーグルが独占禁止法に違反している」として、それぞれを訴えた。
アプリ販売のプラットフォームであるアップルの「App Store」、グーグルの「Google Play」でコンテンツを販売した事業者は、販売金額の30%を運営側に支払う必要がある。さらにアップルとグーグルは「アプリ内で追加コンテンツなどを購入する場合、アプリストアが備える課金システムのみを利用すること」と定める。
しかし、エピックは、フォートナイトのユーザーが自社の独自決済とアップルの決済を並べて使えるようにした。独自決済では価格を下げ、「アップルの決済は手数料があるから高い」とアピールしたのだ。これを受け、アップルとグーグルは「規約違反」を理由に、フォートナイトを各アプリストアから排除したため、不服としたエピックが提訴に踏み切った。
条件交渉の入り口
アップルやグーグルの取り分として「30%は高い」という批判は以前から存在していた。それが「独禁法訴訟」に発展しなかったのは、訴訟に耐えられる体力のある企業が戦いを挑まなかったからに他ならない。
エピックはフォートナイトが絶好調で、ゲーム開発支援のビジネスも好調。今夏までに17億8000万ドル(約1900億円)の資金調達も達成し、経営状態はこれ以上ないくらい良好だ。プラットフォーマーの市場支配に対する世論の反発も高まっている。「やるなら今しかない」のだ。
訴訟がどんな結果をもたらすかについては不透明だ。「30%は高い」と言っても、小規模な企業にとっては、決済や顧客管理のコストを軽減できるので、払う価値のある額ともいえる。また、マルウエア(不正なプログラム)の混入を防ぐ「審査」も、セキュリティー保護の観点から見て有用なのは疑いない。アップルやグーグルは「こうした点から考えれば30%は十分妥当」と主張する。任天堂やソニーのゲーム機でも、販売価格の30%が徴収されており、コンテンツ事業者の見方は一方的ではある。
他方、全ての企業に30%を強いるのが難しくなっているのも事実だ。自社決済に門戸を開く、売り上げの大きなアプリには30%以下になるよう割引を適用する、といった交渉を求める企業は増えている。
エピックの訴えは、本質的にはアップルとの条件闘争だ。エピックにしてみれば割引や自社決済の可能性を引き出せれば「勝ち」だが、それは、各社とアップル・グーグルの間で条件交渉のルールが築かれることにもつながる。
(西田宗千佳・ITジャーナリスト)
(本誌初出 米ゲーム会社エピック アップルの独占に反抗 「手数料30%」崩せるか=西田宗千佳 20200908)