タイ版「上級国民」案件? レッドブル創業者の孫の訴追を見送ったタイ政府が国民の批判を受けて逮捕状を請求
栄養ドリンク「レッドブル」の創業者の孫がタイで2012年、警察官をひき逃げした事件で、タイ捜査当局は8月25日、孫の逮捕状を取った。今年7月に訴追取り下げをいったん決めたが、父のチャルーム・ユーウィッタヤー氏はタイ長者番付で2位の富豪であることから、国民は「金持ちを優遇している」と大反発。警察は再捜査を開始し、新たな証拠が得られたとして再び逮捕状を請求した。
容疑者のウォラユット・ユーウィッタヤー氏は、バンコクで車の運転中にバイクの警察官をはね、逃走した疑いが持たれている。警察には執事を身代わりに出頭させて、自身は国際手配中だった。訴追取り下げの決め手は警察官側にも過失があったとする目撃証言。だが、目撃者は7月末に交通事故で急死しており、事件との関連を疑う見方もある。
格差の激しいタイでは、以前から「当局が富裕層に甘い」との不満がくすぶる。創業者一族は新型コロナウイルス対策として政府に3億バーツ(約10億円)を寄付しており、学生らによる反政府集会では「寄付の見返りか」と批判された。世論に対し、プラユット首相は調査委員会を設置、検察や警察も検証を迫られ、逮捕状請求につながった。
(高木香奈・毎日新聞アジア総局)
(本誌初出 タイ 「レッドブル」孫に再び逮捕状=高木香奈 20200922)