半導体で巨額買収 AMDがデータ市場へ インテルと真っ向勝負=津田建二
パソコン用のCPU(中央演算処理装置)を手掛ける米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は10月27日、同業の米ザイリンクスと350億ドル(約3兆6000億円)で買収することで合意した。AMDは今回の買収で多様なチップを設計・開発できる体制を整え、需要が急激に伸びるデータセンター向けに先行する米インテルを追撃する。
米半導体大手エヌビディアが今年9月、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計企業アーム・ホールディングスを400億ドルで買収することに合意したように、半導体業界では巨額のM&A(合併・買収)が相次いでいる。再編の大きなカギの一つがデータセンター向けの需要拡大にあり、米アマゾンや米マイクロソフト、米グーグルなどのクラウド業者は今、データセンター内のコンピューターの能力向上にしのぎを削っている。
クラウドとは、仮想的なコンピューターのことであり、その物理的なコンピューターはデータセンターにある。そのために必要なのはCPUやGPU(画像処理用チップ)、プログラムの変更で自在に機能を構成可能なFPGAチップなどの半導体を大量にそろえることだ。この分野で先行するのはCPUに強みを持つインテルで、16年にはFPGAメーカーの米アルテラを買収してデータセンター向けの半導体開発に力を入れてきた。
サーバーの「制約」
AMDはパソコン用のCPUとGPUを手掛ける一方、ザイリンクスはFPGAチップや、FPGAを集積したシステムLSI(複数の機能を統合した集積回路)を開発する。AMDは今後、FPGAも手に入れることで本格的にデータセンター市場に参入し、インテルと真っ向から勝負を挑むことになる。
AMDはゲーム用パソコンやゲーム専用機のCPUとGPUの市場で業績を伸ばし、CPUが同じアーキテクチャー(設計思想)のインテルや、ゲーム機向けGPUで競ってきたエヌビディアをライバル視。一方、インテルが買収したアルテラはザイリンクスのライバルであり、FPGA首位のザイリンクスをアルテラが追う構図だった。
ただ、今回の買収により、独立系のFPGAメーカーとして今後も残るのは、米ラティス・セミコンダクターだけになる。NECなどデータセンター向けのサーバーメーカーにとっては、インテルとAMDという2強に収れんする状況は、サーバー構築の自由度を確保する面からも望ましいことではない。今後、この市場を狙う日本メーカーが出てくれば、日本の半導体産業にとってチャンスとなる。
(津田建二・国際技術ジャーナリスト)