ドバイ 石油の次は「水素」=池上理
二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンエネルギーである「水素」の製造を巡り、石油・ガスに恵まれる湾岸諸国の動きが活発だ。
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国では、ドバイ電力・水庁が「グリーン水素」の製造施設の建設を進めている。グリーン水素は太陽光発電により、水を電気分解して生成し、燃料電池車向けに供給される計画だ。サウジアラビアでも、NEOM(ネオム)と呼ばれる新都市計画で、世界最大規模となる総額50億ドルのグリーン水素・アンモニア製造施設を建設する。グリーン水素は製造コストがかさむ点が課題だが、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査によれば、2030年ごろには従来の化石燃料由来の水素と、同等の水準にまで低下する見通しだ。
化石燃料由来の水素製造に関しても、製造時に排出されるCO2の回収・利用・貯蔵(CCUS)と組み合わせることで、「ブルー水素」と呼ばれるクリーンな水素の製造が可能となる。サウジアラムコなど湾岸各国の石油公社は、石油需要が30年にもピークを迎えるとの予測を踏まえて、新たな収入源を確保すべく、ブルー水素事業の実証研究を進めている。
(池上理・国際協力銀行ドバイ駐在員事務所)