国際・政治注目の特集

1都3県に緊急事態宣言 避けられない景気「二番底」 春先までのコロナ抑制カギ=小林真一郎

     菅義偉首相が1月5日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため首都圏の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)を対象に緊急事態宣言を発令する方針を表明し、景気の下振れリスクが急速に高まっている。昨年4~5月の緊急事態宣言時と同様、個人消費の急速な減少が見込まれ、宿泊・飲食サービス業、旅客輸送業、旅行や娯楽などの個人向けサービス業、百貨店などの一部の小売業の経営に大きな打撃を与えるのは必至である。

     景気がどこまで悪化するかは、対象地域の拡大や期間の延長の有無によって変わってくるが、少なくとも首都圏の経済規模は全国のおよそ3分の1になるため影響は甚大である。このため、2021年1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比でマイナスとなることは必至であり、景気が二番底に陥るリスクが高まりつつある。

     今回の事態は、景気に配慮して決断が遅れてしまったことで招いてしまった政府の失策である。結果的に感染拡大防止と経済活動のバランスが崩れてしまい、かえって景気を悪化させることになってしまった。

    前回よりは緩やかか

     それでも、徹底的に需要を抑え込んだ前回の緊急事態宣言と比べると、景気の落ち込みは緩やかにとどまる見込みである。前回は何をやるべきなのか手探り状態であったこともあり、人の移動を平常時に比べて8割、少なくとも7割減らすことが目標とされ、経済活動が「瞬間凍結」された。しかし、今回は広く社会で感染防止策が浸透し、人々の感染防止意識が高まっていることもあり、やみくもに経済活動を停止させる必要はない。政府も経済活動の制限を限定的、集中的にとどめる方針だ。

     また、通信販売や食品などのテークアウト(持ち帰り)への対応推進、テレワーク体制の整備などもあり、需要の落ち込みや営業活動の混乱などは、ある程度回避できるはずである。

     しかし、景気が一段と冷え込むリスクはある。今回の緊急事態宣言の発令を受けて、企業や個人事業主の間で景気持ち直しや需要回復への期待感が剥落し、雇用調整や設備投資縮小などの動きが広がる場合だ。間もなく新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年がたつが、「ウィズコロナ(コロナとの共生)期間」が想定以上に長期化するとの諦めムードが広がれば、事業の縮小・撤退、店舗閉鎖、廃業・倒産、希望退職募集、新卒採用の絞り込みなどの後ろ向きの動きが増える可能性がある。

     緊急事態宣言下で最も打撃を受けるのがサービスへの支出であるが、1年で最もサービス支出が増えるタイミングが4月であり、2番目が3月である。卒業式、入学式、お花見などイベントが多く、旅行も盛んとなることが背景にあるが、この時期までに感染を抑え込むことができれば、今回の緊急事態宣言の傷は比較的浅くて済むだろう。しかし、2年連続で春先の需要を失うことになれば、企業や個人事業主の諦めムードが一気に高まる懸念がある。

    (小林真一郎・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員)

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