山梨・和歌山の震度5弱は、フィリピン海プレート沈み込みという共通の理由=鎌田浩毅
山梨・和歌山で震度5弱 プレート沈み込みで地震多発/80
関東と関西で12月3日、震度5弱の地震が立て続けに日本列島を襲った。まず、午前6時37分に山梨県東部の富士五湖を震源とするマグニチュード(M)4・8の地震が発生し、大月市で最大震度5弱を観測した。また午前9時28分には和歌山県・紀伊水道でM5・4の地震が発生し、御坊市役所で窓ガラスが割れる被害も出た。(鎌田浩毅の役に立つ地学)
3時間足らずの間に発生した二つの地震に直接の関連性はないが、いずれもフィリピン海プレートの沈み込みという共通の原因による。本連載第66回でも触れたように、日本は四つのプレートが重なり合っている世界屈指の変動帯にある。
富士五湖の地震は、伊豆半島の北でフィリピン海プレートがユーラシアプレートへ沈み込む境界付近で起きた。一方、紀伊水道の地震はフィリピン海プレートの直上にあるユーラシアプレート内部で起きた地震である。それぞれ震源は深さ19キロ、18キロと、どちらも比較的浅い場所だったため、強い揺れが地上を襲った。
富士五湖の近くには富士山があり、噴火との関連も心配されたが、地震計やひずみ計などの観測データには特段の異常は見られなかった。結果として地震の規模が小さく、かつ富士山のマグマだまりから30キロも離れているため、直ちに噴火する恐れはない。
ただ、今回のM4・8規模の地震が富士山のマグマだまりの近傍で起きると、噴火に対して警戒が必要となる。マグマだまりの周囲に亀裂が生じて中の水が水蒸気になり、マグマが激しく泡立つからである。
「昭和南海」前と類似
一方、紀伊水道の地震は、近い将来に発生が見込まれるM9規模の南海トラフ巨大地震に向け、増え続けている内陸地震の一つであると考えられる。南海トラフ巨大地震はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界が激しく滑ることによって起きる。前回の昭和南海地震(1946年)では1300人以上の死者を出し、各地で津波による被害も出た。
その発生時期は2030~40年ごろ、また規模はM9・1と予想され、ユーラシアプレート内部にひずみが蓄えられている状況にある。1995年の阪神・淡路大震災以降、西日本では直下型地震が増える活動期に入っており、今回の紀伊水道の地震もその一例である。ちなみに、紀伊水道は南海トラフ巨大地震の想定震源域にも含まれており、これまでもM4以上の地震がたびたび発生している。
21年9月以降に震度5弱以上を記録する地震は、日本列島で6回記録された。こうした直下型地震が南海トラフ巨大地震を直接誘発はしないが、昭和南海地震前にも内陸では地震が多発しており、現在とよく似ている。
今後、プレート境界でM7規模の地震が起きると、M9規模の地震を誘発する可能性がある。現代の地震学ではその時期を特定することはできないが、西日本では今後も直下型地震が増えることは確実であり、十分な警戒が必要となる。
■人物略歴
かまた・ひろき
京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。