年金が新年度から変わる 高齢者就労の増加を反映=編集部
変わる年金と仕事のカタチ 「自律型キャリア」の時代=中園敦二
<損しない! 資産形成&年金・仕事>
「新型コロナウイルス禍をきっかけに、節約や貯蓄に目覚めた人が増えている」と話すのは三井住友トラスト・資産のミライ研究所の唐木田みわ研究員だ。(資産形成・年金・仕事 特集はこちら)
同研究所が2021年3月に20~64歳の男女1万人を対象にしたアンケートによると、回答者の3人に1人以上が「節約やポイ活(ポイント・マイルの活用)といった家計面の工夫・努力を始めた」と答えた。また、「預貯金し投資信託を購入した」は6人に1人、「NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)などの優遇制度の利用を始めた」は12人に1人という割合だった。
若い世代を中心に時間的なゆとりが増えたこともあり、資産形成の意識が高まって、実際の行動に結び付いている。近年は「FIRE(ファイア)(経済的自立と早期リタイア)」への関心も高まっている。背景には、20~30代の現役世代を中心に、自分たちは年金には頼れない──という危機感がある。
その年金制度は、今年4月から年金受給開始年齢の上限が現行の70歳から75歳に引き上げられる。
受給開始を65歳から最大75歳にすると最大8割増となる。根底には年金は現役世代が負担しているため、年金制度の“健全化”への見直し、定年後の再就職など働き手を増やして年金を支える狙いがある。
「団塊の世代」(1947~49年生まれ)が75歳以上の後期高齢者に突入した今、政府は高齢者の就労を増やそうと70歳までの就業機会の確保を努力義務とした。
100人100通り
リタイア年齢の上昇に加え、コロナ禍を機にテレワークが増えるなど働き方も多様化した。その中で、企業には人事制度の見直しの機運が強まっている。
企業による副業の活用もその一つ。業界大手が自社の社員に、副業として異業種の企業で働くことを認め、幅広いビジネススキルを身に付けさせようとする動きが広がっている。ヤフーやキリンホールディングスなど企業側で副業による人材交換の仕組みを整える例も出てきた。法政大学の田中研之輔教授は「22年の注目は『キャリアトランスフォーメーション(CX)』だ」と話す。これは、「組織内でのキャリア」から「自律型のキャリア」へ促すことで個人が成長し、それが企業の生産性につながるという考え方だ。
終身雇用が崩壊し、働き方も、年金を含めた資産の作り方、その運用も「100人100通り」の時代が来ている。本特集では、従来の資産形成の“定石”が崩れるなかで、「損をしない」ために必要な知識とノウハウをまとめた。
(中園敦二・編集部)