資源・エネルギー鎌田浩毅の役に立つ地学

震度6強の福島県沖地震 さらに大きな余震も要警戒

 3月16日深夜に福島県沖でマグニチュード(M)7・4の地震が発生し、宮城・福島両県で最大震度6強を観測した。3月17日午前8時現在で死者4人、負傷者97人の大きな被害が出たほか、東北新幹線が脱線し、東京電力管内で208万戸、東北電力管内で14万8000戸が停電するなど、ライフラインも大きく乱れた。

 今回の震源は東北沖にある東日本大震災の余震域の西端で、深さ57キロにある。日本列島が乗る陸側プレートの下に沈み込んでいる太平洋プレートの内部で発生したものである(図)。昨年2月に今回の震源付近の福島県沖で発生したM7・3、最大震度6強を記録した地震も、深さ55キロと、やはり太平洋プレート内部で起きたものだった。

 福島県沖はM7・4程度の地震が40年ほどの周期で繰り返している地震活動域であり、東日本大震災に伴う広い意味での「余震」が頻繁に起きている。政府の地震調査研究推進本部は今年1月時点で、日本海溝沿いの沈み込んだプレート内で、今後30年以内にM7・0~7・5の地震が発生する確率を60~70%と見積もっている。

 東日本大震災を引き金として、日本列島周辺の地震が活発化している。その原因は、M9・0という巨大地震が日本周辺の地盤を不安定にしたからだ。日本列島は東日本大震災によって東へ引き伸ばされ、最大5・3メートル太平洋側に移動したほか、太平洋岸では地盤が最大1・14メートル沈降した。こうして加えられた歪(ゆが)みをプレートが解消しようとするため、現在も地震が頻発している。

スマトラ島沖の経験

 こうした状況は少なくとも今後、数十年は続くと予想され、さらに大きな余震が起きることも覚悟しなければならない。地学の持つ「過去は未来を解く鍵」という考え方から、過去にM9クラスの地震後に観測された現象を調べてみると、今回より規模が一つ大きいM8クラスの地震が起きると予測される。

 例えば、東日本大震災とよく似たM9・1の海溝型地震が2004年12月、インドネシアのスマトラ島沖で起きている。その後、05年3月にスマトラ島近傍でM8・6の地震が起き、10年10月にM7・7、また12年1月にはM7・3の地震がそれぞれ発生している。いったんM9クラスの巨大地震が起きると、それほど地盤を不安定にさせてしまうのである。

 11年3月に発生した東日本大震災は、平安時代の869年に起きた貞観地震以来、約1000年ぶりに日本列島を襲った巨大地震であり、「大地変動の時代」をもたらした。東日本大震災は10年以上たった今なお深い傷痕を残すが、地学的にも過去のことでは決してない。


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。

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