マンションが危ない! 「安過ぎコンサル」に国も調査
マンションが老朽化に加え、住人の高齢化・空室化に直面している。タワーマンションなどでは修繕積立金の不足なども表面化する。国民の8人に1人が住むマンションに、ひたひたと危機が忍び酔っている。
大規模修繕で国が実態調査
どのマンションも必ず経験する大規模修繕が揺れている。規模の大きいマンションなら億単位の工事になるが、発注する側の管理組合は住人で構成するため、いわば“素人”同然だ。
国土交通省は今年5月、大規模修繕についての初の実態調査結果を公表した。16年11月に発覚した「不適切」コンサルタント問題を受けて、同省が管理組合に工事が高すぎないか、発注の参考にしてほしいと、大規模修繕のコンサルを請け負う設計会社や事務所を対象に実施。その結果を見ると、1戸当たりの工事費は75万~100万円が最も多く、仮設工事や外壁塗装、屋根防水、給水設備など工事金額の内訳も分かる。また、大規模修繕の回数ごとにも結果がまとまっている。
通常、工事の設計から監理まで行うコンサル料は、1棟当たり500万円くらいが相場だ。だが、一部のコンサル会社は、半額から3分の1程度の格安な料金を提示して仕事を請け負い、自社にバックマージンを支払う施工会社に割高な修繕工事を受注させているという。マンションの管理組合もコンサル料が安価な方を選びがちだが、工事費は最終的に水増しされるため、割高な工事費を支払うことになり、結果として損害を被る。
この問題は、設計事務所、施工会社などで作る「マンションリフォーム技術協会」(東京)が、業界が混乱状態にあるとして「告発」したのが発端だった。同協会の柴田幸夫相談役(前会長)は「最近、不適切コンサルの数が増えて、それらが組織的に動くようになっている。本来、コンサル会社は発注者である管理組合の代理人として、工事を指導・監督する立場にある。受注する施工会社からバックマージンをもらっていれば、適切に監督できているのか疑問だ」と指摘する。
この告発は管理組合や施工会社などから反響が大きく、翌17年1月には、国交省が管理組合などに、「管理組合の利益と相反する立場の設計コンサルの存在が指摘されている」として、注意を喚起した。
「管理不全」も表面化
マンションをめぐっては、「管理不全」も表面化しつつある。
東京都内の築47年のあるマンション(30戸)は管理組合もなく、管理会社も入っていない。修繕積立金も集めていないため、修繕もほとんどしてこなかった。都の委託を受けたマンション管理士の飯田太郎・TALO都市企画代表は、組織づくりや修繕計画の作成を支援し、相談にも乗っている。「マンションの寿命を延ばしていくしかないので、いい管理会社を探しているが、管理会社も人手不足だ」と飯田さん。
都が13年に公表した「マンション実態調査」では、管理組合がないマンションは全体の6・5%、長期修繕計画がないのは14%だった。調査の回収率が17%と低く、未回答のマンションに追加調査をかけたところ、管理組合のない割合は高まった。
宇都宮市にある築40年のマンションは、管理会社が手を引き、2年前から会計業務のみを横浜市の管理専門会社「横浜サンユー」に委託している。管理組合はあるが、高齢者が多くて成り手が不足しており、管理費の滞納も多い。
横浜サンユーの利根宏社長は語る。「管理業務全体だと費用がかかるため、会計だけをうちに委託するところも多い。中にはスラム化、荒廃化が始まっているマンションもある。お金がなくて修繕できないと老朽化した配水管の水漏れ事故が始まる。事故が増えると(管理組合が加入する損害保険の)保険会社も引き受けない。そうならないように食い止めている。建て替えられなければ、最後まで『看取る』しかない」。
いまや国民の8人に1人が住むというマンション。危機が足元に忍び寄っている。
マンションが危ない!「安過ぎ」コンサルご注意 大規模修で国が実体調査
(下桐実雅子/小島清利・編集部)