経済・企業特集

最強!ニッポン電子部品 世界随一の「サムライたち」 第4次産業革命をけん引=浜田健太郎

    「これからの車は半導体の塊になる」(ソフトバンクグループの孫正義社長)──。トヨタ自動車とソフトバンクは10月4日、自動運転の普及を見据え、業務提携を発表した。記者会見で、時価総額国内首位のトヨタの豊田章男社長と同2位のソフトバンクの孫社長が固い握手を交わしたことは、報道陣にかつてない産業構造の変革が進んでいることを印象づけた。

    特集「最強!ニッポン電子部品」

     AIの進化とIoT(モノのインターネット)を通じて新しい付加価値と富を生み出そうとする潮流は「第4次産業革命」などと形容される。日本の電子デバイス企業は、その主要なプレーヤーとして、世界の半導体市場で存在感を強烈にアピールしている。

     例えば、スマートフォン(スマホ)のカメラなどで用いられる撮像素子(イメージセンサー)で、ソニーの世界シェアは50%超。スマホやサーバー装置の記録媒体に用いられるフラッシュメモリーで、東芝メモリは韓国サムスン電子に次いで世界2位だ。高電圧、大電流を扱うことが可能で、電気自動車や鉄道の電力を制御するパワー半導体は三菱電機(世界3位、英IHSマークイット調べ)、東芝(同4位)、富士電機(同6位)の日本勢が上位に顔を出す。

    自動車分野で首位

     自動車に搭載される半導体では、ルネサスエレクトロニクスが世界3位(米ガートナー調べ)だが、クルマの「頭脳」に当たるマイコンでは世界首位だ。同社は2016年9月と今年9月、合計で1兆円強の米半導体企業の買収を発表した。呉文精社長は「『ワールドカップ』で優勝を狙う」と強調する(本誌37ページ)。電子部品の電圧を安定させ、スマホなどに不可欠な積層セラミックコンデンサー(MLCC)で村田製作所は世界シェアの約4割を握る。同社の村田恒夫社長は、今後、急激に拡大する自動車向けの需要に対応し、増産投資を進めると説明する(同36ページ)。

     これらの日本企業に共通する特徴は、世界初・唯一の製品の開発にまい進し、その後も地道に生産技術を磨いてきたことだ。

     

    電子機器産業では、上流の研究開発や設計、中流の製造・組み立て、下流の流通やサービスの各過程で創出される付加価値が、上流と下流が高くなり、中流で低くなる「スマイルカーブ」の存在が知られている。1980年代後半に50%超(米調査会社ガートナー調べ)に上った「日の丸半導体」の世界シェアは17年に10・8%(同)まで低下。「電子立国」の凋落(ちょうらく)を印象づけたが、個別製品ごとにみると図(18~19ページ)が示すように世界で活躍する日本製の電子デバイスは少なくない。これらの製品を開発・製造する日本の企業群は、まさに、「上流~中流」で中国企業が及ばない付加価値を提供している。

     

    経済産業省幹部は、「日本の電子デバイス産業には、分野ごとのチャンピオンもしくは2番手、3番手がそろい、自らのイノベーションで成長市場を切り開くことができる態勢が整った」と指摘する。

     東海東京調査センターのシニアアナリスト、石野雅彦氏は、「AIの進展で社会インフラが劇的に変化している中で、スマートフォンと自動車の2大産業における新しい陣地をどう取るのかの勝負になっている」と語る。同氏が特に注目するのが、ソニーのイメージセンサーだ。「中国のスマホメーカーはソニーの半導体部門への訪問回数を増やしている」(石野氏)という。

     

    一方で、気になる動きもある。電子デバイスメーカーにとり、アップルの「iPhone」に製品が採用されるかどうかは、サッカーのワールドカップ出場に匹敵する出来事だ。ハイテク・コンサルタント会社、テカナリエ(東京都中央区)の清水洋治代表が米アップル社のスマホの最新機種「iPhoneXS」を分解後、主要な半導体チップの製造元を洗い出したところ、ソニーのイメージセンサー、東芝のフラッシュメモリー、村田製作所のデュプレクサー(送信と受信の周波数を分ける装置)などが搭載されているものの、日本製チップは全体の約1割どまりだった。また、最も付加価値の高い半導体であるCPU(中央演算処理装置)は、アップル自身が設計している。

    イノベーターか脇役か

     デバイス産業の主戦場は、今後、スマホから自動車分野に移行していく。車1台に使われる電子デバイスの数もスマホに比べ飛躍的に増えると見込まれる。日本の電子デバイス各社は世界的なイノベーションを生み出して自動車分野でもスマイルカーブの上方を狙うのか、それとも、アップルが最も多くの利益を享受するスマホ市場のように「黒衣役」に徹するのか。その経営戦略の優劣も勝負の分かれ目になりそうだ。

    (浜田健太郎・編集部)

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