芝山幹郎氏
掲載記事 47件
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イラン政府に製作を禁じられたパナヒ監督が国境の村でつむいだ困難な戦いの物語 芝山幹郎
アートな時間
映画 熊は、いない ジャファル・パナヒが、ジャファル・パナヒの役を演じている。パナヒは、イランの映画監督だ。1960年に生ま…
2023年9月1日
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吹きさらしの空間に怯まない猫 風通しのよいドキュメンタリー 芝山幹郎
アートな時間
映画 猫と、とうさん 古くは「ハリーとトント」(1974年)があった。最近ではイスタンブールの裏通りで撮られたドキュメンタリ…
2023年7月28日
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ひと味違う中毒者映画 主演の演技がめざましい 芝山幹郎
アートな時間
映画 To Leslie トゥ・レスリー アルコール依存症の映画は数多い。「失われた週末」(1945年)をはじめ、「リービン…
2023年6月16日
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肉体は牢獄、まなざしは楽天的、そんな実例を目撃できる室内劇 芝山幹郎
アートな時間
映画 ザ・ホエール 窓の外を、ときおり小鳥の影がよぎる。扉の外から、ピザの配達係が声をかける。 部屋の主は表へ出ない。アイダ…
2023年3月31日
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節度の保たれたリメイクだ。主人公が観客のそばにいる 芝山幹郎
アートな時間
映画 生きる LIVING ミスター・ウィリアムズ(ビル・ナイ)が〈ラウアン・トゥリーの歌〉を口ずさむ場面が、映画に2度出て…
2023年3月3日
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緑の谷と栗毛駒に正直者の情感が絡み…… 芝山幹郎
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映画 ドリーム・ホース 映画で描かれる競走馬は、後方から追い込んで勝つケースが多い。わかりやすい絵解きだ。気が弱かったり、世…
2023年1月6日
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ヴィクトリア朝に生きた挿絵画家とその妻の、単純ではない愛の物語 芝山幹郎
アートな時間
映画 ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ 邦題(「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」)を見ると、話にきれいごとが多いの…
2022年12月2日
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シングルマザーとスペイン内戦を合流させるアルモドバルの力技 芝山幹郎
アートな時間
映画 パラレル・マザーズ 最初はメロドラマのようにはじまる。ペネロペ・クルスの扮するジャニスという写真家が、法人類学者アルト…
2022年11月4日
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香港映画界の名監督7人による七重奏は哀惜だけにとどまらない 芝山幹郎
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映画 七人樂隊 企画当初、この映画の題名は「八部半」と予定されていた。フェデリコ・フェリーニの名作を意識した題だが、8人の監…
2022年10月7日
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シアマ監督が「ささやきのマジック」で描く哀惜と鎮魂=芝山幹郎
アートな時間
映画 秘密の森の、その向こう 少女がひとり、老人ホームの個室を順番にまわり、居住者に別れを告げている。やがて少女は居住者のい…
2022年9月2日
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ビーチボーイズの支柱を助手席に乗せて、南カリフォルニアを巡りつつ=芝山幹郎
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映画 ブライアン・ウィルソン/約束の旅路この天才は「壊れ物」だった。そんな彼の安息を願う映画 10年前の2012年8月、私は…
2022年7月29日
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緑が多く人が少ないオスロで、生きる実感を追い求める主人公=芝山幹郎
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映画 わたしは最悪。 失敗と迷走を恐れぬ主人公戯画化を避けて丁寧に描く=芝山幹郎 顔がいくつもある映画だ。邦題も巧い。原題を…
2022年7月1日
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任務も因縁も飛び越えて戦闘機乗りよどこへ行く=芝山幹郎
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映画トップガン マーヴェリック重力や世間の掟に逆らって「腕と度胸」で勝負を賭ける 戦闘機の空中戦はドッグファイトと呼ばれる。…
2022年6月3日
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濃い肉体と殺風景な街の落差。両者を煮込む錬金術師の手腕=芝山幹郎
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映画 パリ13区 濃い肉体と殺風景な街の落差 両者を煮込む錬金術師の手腕 導入部の映像が眼を奪う。ゆっくりと動くクレーンショ…
2022年4月29日
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少年の眼から見た故郷の動揺 親密さも当惑も彫りが深まる=芝山幹郎
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映画 ベルファスト 少年の眼から見た故郷の動揺 親密さも当惑も彫りが深まる ベルファストへは紛争のさなかに陸路で入ったことが…
2022年4月1日
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映画 ナイル殺人事件 俗な話を癖の強い役者に委ねる 「オリエント急行」よりも面白い=芝山幹郎
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ケネス・ブラナーが、またもやアガサ・クリスティの古典に挑んだ。前作は「オリエント急行殺人事件」(2017年)で、今度の新作…
2022年3月4日
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世界がどんなに変わろうと 老人と犬は森へ入っていく=芝山幹郎
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映画 白いトリュフの宿る森 世界がどんなに変わろうと老人と犬は森へ入っていく=芝山幹郎 トリュフという単語に特別な響きを感じ…
2022年2月4日
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手で触れられる旧世界への哀惜 アンダーソン映画の深い楽しみ映画
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊=芝山幹郎 この人の発想は無尽なのか。発明精神にも限りが…
2022年1月7日
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映画 パーフェクト・ケア 高齢者問題と危険な捕食者 海千山千の役者たちが強力=芝山幹郎
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鮫(さめ)が出てくる。きれいな歯をした鮫だ。歩くと揺れるブロンド・ボブの髪。高価なジャケットを着てハイヒールを履き、デザイ…
2021年12月3日
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映画 MONOS 猿と呼ばれし者たち 水銀のように流動しながらカオスの内臓を探っていく=芝山幹郎
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水銀のように流動しながら、カオスの内臓を探っていく=芝山幹郎 水銀のような映画だ。流動する粘液が形を変えつづけ、輝きと毒性を…
2021年11月5日
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映画 キャッシュトラック 辛口の犯罪映画に見せかけて悪霊の飛び交う異様な殺戮劇=芝山幹郎
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ガイ・リッチーは当たり外れの大きな監督だ。才気があり、人を食った展開で観客の度肝を抜くのが得意なので、バットの芯に当たった…
2021年10月8日
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自分の車の後部座席で得た感覚 嘆きと苦痛からの緩やかな恢復=芝山幹郎(映画)
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映画 ドライブ・マイ・カー 自分の車の後部座席で得た感覚 嘆きと苦痛からの緩やかな恢復=芝山幹郎 他人が運転する自分の車に乗…
2021年9月3日
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血中アルコール濃度0.05%、奇跡の先にはなにがあったか=芝山幹郎(アート・映画)
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映画 アナザーラウンド 血中アルコール濃度0・05% 奇跡の先にはなにがあったか=芝山幹郎 アナザーラウンド(もう一杯)とい…
2021年7月30日
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平穏の陰の不穏を描きつつ より深い陰翳に手を伸ばす=芝山幹郎
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映画 逃げた女 平穏の陰の不穏を描きつつ より奥深い陰翳に手を伸ばす そよそよと風が吹いているような気がする。鳥の鳴き声も、…
2021年5月28日
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映画 シカゴ7裁判 おかしくて大真面目な法廷劇 切れる頭と笑いの爆弾が同居=芝山幹郎
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第93回アカデミー賞の発表が間近だ。今年の本命は「ノマドランド」だが、異色の穴馬は「シカゴ7裁判」だろう。脚本賞と助演男優…
2021年4月23日
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映画 ブックセラーズ 本の世界の歓びは滅びない ふわりとしたペースが快い=芝山幹郎
アートな時間
身動きも取れぬほどの本に埋もれた暮らし。身のまわりの持ち物を最低限に削って気ままに漂流する暮らし。 思えば私は、若いころか…
2021年3月26日
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映画 水を抱く女 水の精が遭遇した命がけの恋 卓越した技で見せる霊異記だ=芝山幹郎
アートな時間
ウンディーネ(仏語ではオンディーヌ)は水の精だ。ウンディーネには魂が欠けている。魂を得るためには人間の男と結ばれる必要があ…
2021年2月26日
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映画 聖なる犯罪者 気むずかしいが引力の強い映画 若者の仮装と呻きが眼を奪う=芝山幹郎
アートな時間
20歳前後の若者には、とんでもない偶然が舞い降りることがある。たんなる僥倖(ぎょうこう)なのか、ある種の憑(つ)き物なのか…
2021年1月29日
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映画 Mank/マンク 粘り強い描写で炙(あぶ)り出されるハリウッド黄金時代の秘話=芝山幹郎
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カリフォルニア州サンシメオンにあるハースト城には、2度訪れた。最初は空疎な観光地と思ったが、次に非公開の深奥部を見せてもら…
2021年1月2日
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映画 燃ゆる女の肖像 肉と魂の溶け合うアムール 濃密で精緻なサスペンス=芝山幹郎
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古くさい題名と感じるかもしれないが、尻込みすると大魚を逃す。敬遠も損だ。題名の陰に力強い呪術が潜んでいる。恐るべき暗渠(あ…
2020年11月27日
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映画 大頭脳 工夫を凝らしたアクション喜劇 芸達者たちが縦横無尽に暴れる=芝山幹郎
アートな時間
楽しい映画が帰ってきた。劇場公開は約50年ぶりだが、日本ではずっとDVDが発売されていなかった。ジャン=ポール・ベルモンド…
2020年10月30日
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映画 ある画家の数奇な運命 現代史の断面を点綴しつつあの世代の画家に謝意を捧げる=芝山幹郎
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映画を見ている途中で、主人公の生年が気になりはじめた。1937年のドレスデンで幕を開け、60年代前半のデュッセルドルフに至…
2020年10月2日
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映画 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー=芝山幹郎
アートな時間
駄菓子に見えて質が高い 侮ると損をするコメディ「ハイスクール生活最後の日々」を描いた映画は少なくない。描きたくなるのも当然だ…
2020年9月4日
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映画 ぶあいそうな手紙 漂流者の情感を炙(あぶ)り出す映画 平凡な玄関の先に隠し部屋が=芝山幹郎
アートな時間
独り暮らしの老人が、気まぐれでエゴの強そうな若い娘と出会う。谷崎潤一郎の書いた「瘋癲(ふうてん)老人日記」やピーター・オト…
2020年7月31日
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映画 レイニーデイ・イン・ニューヨーク かくれんぼを楽しむような偶然との戯れ方が職人芸だ=芝山幹郎
アートな時間
ニューヨーク州北部の小さな大学に通う若いカップルが、マンハッタンへやってくる。ギャツビー(ティモシー・シャラメ)という青年…
2020年7月3日
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映画 アメリカン・ファクトリー 米国人を大勢雇った中国企業 併用禁忌を招いたのはなぜか=芝山幹郎
アートな時間
併用禁忌という言葉がある。代表的な例はニトログリセリンとバイアグラだが、要は、薬の飲み合わせが悪いことを指す。薬に限らず、…
2020年6月5日
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映画 ルディ・レイ・ムーア 半端芸人の仕掛けた大勝負 E・マーフィが見つけた鉱脈=芝山幹郎
アートな時間
エディ・マーフィには、好悪こもごもの感情を抱いてきた。いうまでもなく、彼は人気コメディアンだ。1980年代の前半、「48時…
2020年5月1日
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映画 フェアウェル 蛍光灯がなぜか暖かい 感情の色彩も重層的だ=芝山幹郎
アートな時間
「フェアウェル」は「お別れ」を意味する。英語の題も日本語の題も同じだ。だが、中国語の題名は「彼女に言わないで」と訳すことがで…
2020年4月3日
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映画 ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方=芝山幹郎
アートな時間
共生という繊細なダンス 不調和がもたらした調和 エコロジー、プラネット・アース、自然農法……ベーシックで、まっとうな考え方と…
2020年3月6日
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映画 スキャンダル 勧善懲悪では終わらない難問 権力濫用の先にはなにが潜む?=芝山幹郎
アートな時間
アメリカでは派手に報道された話だから、記憶している方が多いかもしれない。 FOXニュース社のCEOロジャー・エイルズが度重…
2020年2月7日
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映画 フォードvsフェラーリ 車の轟音と男たちの咆哮が響く 息つぐ暇もない傑作娯楽映画=芝山幹郎
アートな時間
レースの描写が迫力満点で、人と人のぶつかり合いも素晴らしくダイナミックだ。これぞ古典的なアクション映画の王道だが、その充実…
2020年1月10日
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映画 ロング・ショット/僕と彼女のありえない恋=芝山幹郎
アートな時間
国務長官と短慮な男の恋 「強い女」の先にはなにが? シャーリーズ・セロンが演じるシャーロットは、次期大統領を狙う国務長官だ。…
2019年12月6日
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映画 IT/イット THE END キングの奇想に力勝負を挑む 狙いは現代の活動大写真だ=芝山幹郎
アートな時間
2017年に公開された「IT/イット」の続篇といっても誤りではないが、後篇と呼ぶほうがぴったり来る。1989年秋にメイン州…
2019年11月8日
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映画 存在のない子供たち=芝山幹郎
アートな時間
悲惨や絶望に耽溺せず貧困と混沌を直視する「カオスにはつねに期待してよい」とかつて開高健は述べた。私もそう思っていた。外国の町…
2019年7月12日
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映画「暁に祈れ」即物的な暴力が寓話を破壊する 素早いキャメラが定石を粉砕する=芝山幹郎
アートな時間
刑務所映画という定番がある。「穴」(1960)や「暴力脱獄」(67)、「アルカトラズからの脱出」(79)や「ショーシャンク…
2018年12月14日
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映画 クレイジー・リッチ! 最低最悪の登場人物が続々 足を止めて観察したい奇観=芝山幹郎
アートな時間
好感を持てる人物が、ひとりとして出てこない。それどころか、どいつもこいつも、とため息をつきたくなるような俗物が、つぎからつ…
2018年9月25日
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映画 ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 率直さと完全主義を共有し、天才と天才がつながり合う=芝山幹郎
アートな時間
1980年のウィンブルドンは、いまも忘れがたい。私は少し前に40日ほど入院し、病み上がりの青い顔でテレビにしがみついていた。…
2018年8月27日