歴史書の棚
掲載記事 288件
-
爆撃機と空襲の歴史から日本の加害と被害が見えてくる 井上寿一
歴史書の棚
戦争をめぐる記憶が呼び起こされる季節になった。戦時中の同時代の人々にとって、空襲の記憶を消し去ることはできないだろう。空襲…
2023年7月7日
-
漫画家・横山光輝の描く項羽と劉邦 中国思想史の専門家が解説 加藤徹
歴史書の棚
漫画家の横山光輝の作品は幅広い。『鉄人28号』『魔法使いサリー』『バビル2世』など子ども向け漫画もあれば、『三国志』や『水…
2023年6月30日
-
今の視点で見てはならない ヨーロッパ中世の“常識”を覆す入門書 本村凌二
歴史書の棚
ギリシャやローマのような古代史を学ぶ者でも、少し専門家になると、中世史はとても気になる題材である。最大の理由は、古代人が書…
2023年6月16日
-
防大准教授の現役海佐が描く幕末洋式海軍の姿 今谷明
歴史書の棚
日本の水軍の歴史は意外にも古い。「高句麗好太王碑文」には、倭(わ)軍が391年に大挙して朝鮮半島に攻め入ったことが記されて…
2023年6月9日
-
なぜ“神話国家”は生まれた? 「戦前」の分析から理解 井上寿一
歴史書の棚
「新しい戦前」という表現が独り歩きしている。今の日本に「戦争とファシズム」が忍び寄っていることの表現だとすれば、それはまち…
2023年6月2日
-
独自の政教一致体制で平和を維持したチベットの歴史を概観 加藤徹
歴史書の棚
石濱裕美子著『物語 チベットの歴史 天空の仏教国の1400年』(中公新書、990円)は、古代から現代まで激動の歴史を生き生…
2023年5月26日
-
1年1テーマで描くロシアの20世紀 著者はウクライナ出身ユダヤ人 本村凌二
歴史書の棚
最近では、居酒屋でもロシアやウクライナのことが話題になる。酒宴の席に政治と宗教の話は持ちこむなといわれているのに、不可解な…
2023年5月12日
-
御物はいかにして守られたか 正倉院前事務所長が解説 今谷明
歴史書の棚
正倉院といえば、奈良東大寺の境内近辺にあって、主として聖武天皇の遺愛の宝物を伝え、「勅封」という制度によって約1300年に…
2023年5月2日
-
うそは政治の必要悪 プロパガンダは戦争の一手段 井上寿一
歴史書の棚
憎まれっ子だけでなく、うそつきも世にはばかるのは今も昔も変わらない。中でも政治の世界にうそは多い。高市早苗経済安全保障担当…
2023年4月21日
-
文革による殺人の実態 丹念な取材で記録 加藤徹
歴史書の棚
最近「戦後は終わった。新たな戦前が始まる」という言説を耳にする。中国人も同様だ。すでに「文革後」は終わり新しい「文革」が始…
2023年4月14日
-
人口爆発と少子化への対処は歴史から学べ 本村凌二
歴史書の棚
終戦後の第1次ベビーブームのころ、1年間に270万人も生まれていたのに、昨年はとうとう80万人にすら達しなかった。3分の1…
2023年3月31日
-
兵なく落武者狩りの恐れもあった伊賀越えなど“家康の三大危機”描く 今谷明
歴史書の棚
今年のNHK大河ドラマは徳川家康がテーマで、家康関連本が書店にあふれている。今回はその中でも比較的手堅い手法で家康の危機を…
2023年3月24日
-
非占領下日本における政治家の動きとメディア状況を検証 井上寿一
歴史書の棚
ロシアのウクライナ侵攻が続いている。ウクライナの一部地域は事実上、ロシアに占領されたままである。日本は占領と被占領の両方の…
2023年3月17日
-
矛盾だらけの最高権力者、西太后の横顔と本音を暴露した回想記 加藤徹
歴史書の棚
中国の権力者は、自分の腹の底を明かさない。臣民も外国人も、戦々恐々と権力者の顔色をうかがう。それが中国の帝王学だ。中国の権…
2023年3月10日
-
歴史の深層にふれるなら、歴史家の叙述より歴史小説 本村凌二
歴史書の棚
大文豪の名にふさわしいトルストイは、歴史家に対する批判者でもあった。「歴史家とは、誰も尋ねていないことをただ書き並べている…
2023年3月3日
-
三輪山に疫病退散を祈る 古代豪族の盛衰明らかに 今谷明
歴史書の棚
古代人は、山岳や湖沼など自然の地形を神に見立て、その自然を「神社」として崇(あが)めてきた。したがって、その自然地形が社殿…
2023年2月24日
-
ぜい弱だった司法権の独立を守り、民主化を勧めた田中耕太郎 井上寿一
歴史書の棚
近年において憲法改正の機運が高まったのは、安倍(晋三)内閣の頃だろう。対する今はどうか。岸田文雄首相兼自民党総裁は、派閥(宏…
2023年2月17日
-
4世紀末から500年余のビックリ中国仏教史 加藤徹
歴史書の棚
中国史には「拓跋(たくばつ)国家」という用語がある。西暦386年の北魏の建国から、北朝の諸王朝、隋を経て、907年の唐の滅…
2023年2月10日
-
巨匠・大塚久雄に学ぶ共同体の解体と資本主義 本村凌二
歴史書の棚
戦後日本には仰ぎ見るような知の巨匠がいた。政治学の丸山真男、経済学の宇野弘蔵と並び、経済史学の大塚久雄の名はひときわ輝いて…
2023年2月3日
-
新史料を徹底調査、大塩平八郎の乱の真相を解明した労作 今谷明
歴史書の棚
大塩平八郎の乱は天保8(1837)年2月に起こった。教科書にも特筆されている江戸後期の大事件であるが、事件はわずか半日程度…
2023年1月27日
-
近現代の日本社会と日本軍への固定概念を揺るがす海外の研究書2冊 井上寿一
歴史書の棚
海外における日本近現代史研究の水準はきわめて高い。幸いにもすぐれた訳業による翻訳書で読むことができる。以下では2冊、紹介す…
2023年1月20日
-
映像作家が有名無名さまざまな声を集めて展開する中国通史 加藤徹
歴史書の棚
欧米人が書く中国通史は、日本人が書くそれと趣が違う。日本の読者は、故事成語とか三国志とか、それなりに予備知識があり読みたい…
2023年1月13日
-
心性史の第一人者が樹木に覚える感性・感情の歴史を記述 本村凌二
歴史書の棚
陽光にさらされた地中海沿岸の遺跡を歩いていると、なんとも木陰が欲しくなる。湿度の高い日本ならそれだけでは済まないが、湿度の…
2023年1月6日
-
日本の思想家たちを独自発想で紹介する愉快な哲学書 今谷明
歴史書の棚
本誌の身上相談欄(「小川仁志の哲学でスッキリ問題解決」)に毎号健筆を振るっておられる哲学者による興味深い啓蒙(けいもう)書…
2022年12月23日
-
なぜあの戦争は起きたのか 戦前日本を描く新書2冊で考える 井上寿一
歴史書の棚
12月は8月に次いで戦争の記憶を呼び戻す月だろう。1941年12月8日の真珠湾攻撃は、緒戦の勝利にもかかわらず、結局のとこ…
2022年12月16日
-
『文藝春秋』より抜き中国関連記事からは日中関係の「変化」より「不変」が見える? 加藤徹
歴史書の棚
日本は強大化する中国といかに向き合うべきか。城山英巳『日中百年戦争』(文春新書、1045円)は、その答えを導くため、雑誌『…
2022年12月9日
-
「換気」に注目したナイチンゲールの先見性を知る 本村凌二
歴史書の棚
毎日、始発場からバス通勤で仕事場に通う私は、座った席の横の窓を開ける。コロナが始まったころから、感染症学者の飛沫(ひまつ)…
2022年12月2日
-
邪馬台国は?倭の五王は? 日本古代史の新説次々 今谷明
歴史書の棚
日本の古代史は文献が少ないため、主として地下からの発見、すなわち考古史料の発掘によって常に書き換えられる特性がある。200…
2022年11月25日
-
サラリーマンが歓迎した「中年教養文化」としての司馬遼太郎 井上寿一
歴史書の棚
司馬遼太郎は存命ならば今年99歳、来年、生誕100年を迎える。没後四半世紀を経ても読み継がれている。「国民作家」と呼ぶにふ…
2022年11月18日
-
人気作家・余華が激動の清末民初を舞台に、必死に生きる男女を描く 加藤徹
歴史書の棚
余華著、飯塚容翻訳の『文城(ウェンチョン) 夢幻の町』(中央公論新社、4400円)は読み応えのある時代小説だ。 20世紀は…
2022年11月11日
-
イタリア史家が最新知見を持ち寄って編んだ一冊 本村凌二
歴史書の棚
このたび公刊されたイタリア史研究会編『イタリア史のフロンティア』(昭和堂、3850円)では、多数のイタリア史の専門家がそれ…
2022年11月4日
-
諸説ある能楽史を分かりやすく論じた新書=今谷明
歴史書の棚
前回の書評で顔を出した芸能に、近世武家の式楽であった能楽がある。室町という時代が生んだ卓越した文化として、水墨画と並び称せ…
2022年10月28日
-
「軍制改革の推進者」としての山県有朋像を提示=井上寿一
歴史書の棚
さきの安倍晋三元首相の国葬における菅義偉前首相の弔辞を直接のきっかけとして、にわかに山県有朋への注目が集まっている。弔辞の…
2022年10月21日
-
北京の町並みの今昔や風物、自然の魅力描く歴史エッセー=加藤徹
歴史書の棚
江戸研究の大家・三田村鳶魚(えんぎょ)(1870~1952年)の随筆は面白い。読者は、まるで自分が江戸時代を旅行しているか…
2022年10月14日
-
西欧中心史観を脱した「世界史」構想にはアジアの史実が不可欠=本村凌二
歴史書の棚
しばしば日本人は世界に向けて発信しろと言われる。だが、現実ははなはだ心もとない。海外に出れば、日本語は通用しないし、国際語…
2022年10月7日
-
男女問わずに楽しんだ大江戸エンタメ事情を紹介=今谷明
歴史書の棚
英国オックスフォード大学出身の歴史家で、お雇い外国人として一高などで教鞭(きょうべん)を執ったジェームズ・マードックは、明…
2022年9月30日
-
アジアとの関係再構築に「大東亜」構想の問い直しは必須だ=井上寿一
歴史書の棚
日本にとって1945年8月15日に終わった戦争は、どう呼べばよいのか。今も議論が続いている。細谷雄一編著『世界史としての「…
2022年9月23日
-
戦時下に中国人の戦争観を分析した77年前の名著が再復刊された=加藤徹
歴史書の棚
中国を相手とするビジネスパーソンにとって、例年の今ごろはピリピリする「敏感な季節」だ。7月7日(1937年の日中戦争勃発記…
2022年9月9日
-
百年戦争を舞台に活躍した「聖少女」ジャンヌ・ダルクの生涯を描く=本村凌二
歴史書の棚
百年戦争という名はよく知られていても、日本人の多くはそれほど関心がないのではないだろうか。14世紀半ばから15世紀半ばまで…
2022年9月2日
-
ひなびた寺社の魅力を満載した一風変わった京の案内記=今谷明
歴史書の棚
今回は趣向を変えて、歴史の舞台となった土地について、隠れた名所について取り上げよう。柏井壽(かしわいひさし)著『おひとりか…
2022年8月26日
-
石原莞爾ら陸軍参謀が戦後社会に受け入れられたのはなぜか=井上寿一
歴史書の棚
陸軍参謀7人の戦後の軌跡 戦後日本の再建支えた皮肉=井上寿一 日本の8月は戦争の歴史を振り返る月でもある。なぜ日本は戦争に負…
2022年8月19日
-
ネクラ官僚が清朝末期の英雄になる歴史のダイナミズム=加藤徹
歴史書の棚
清末の太平天国の乱は世界史上最悪の内戦だった。14年間に及び、死者は推計7000万人以上。岡本隆司『曾国藩 「英雄」と中国…
2022年8月12日
-
名著にして入門書、自叙伝付きで新版登場=本村凌二
歴史書の棚
連続講演の雰囲気を醸し出す新訳 戦後生まれの第1世代は今や70歳代半ばで団塊の世代ともよばれている。その世代のなかで歴史学を…
2022年7月29日
-
江戸幕府の特長は優れた「情報統制」にあり=今谷 明
歴史書の棚
情報の取り扱いに長けた江戸幕府の特性に新たな光 江戸幕府八代将軍徳川吉宗が設けた将軍直属の諜報(ちょうほう)組織(密偵)であ…
2022年7月22日
-
核政策と戦後知識人の関わりを考える2冊=井上寿一
歴史書の棚
非核論と知識人の役割 今こそ再考を 現在の日本における知識人の社会的な地位は、暴落していると言っても過言ではないだろう。今や…
2022年7月15日
-
新疆問題を考えるうえで必読の通史=加藤 徹
歴史書の棚
ウイグル問題の根源を知る日本語初の「新疆」通史 欧米諸国や亡命ウイグル人は、中国はウイグル人にジェノサイド(特定民族への虐…
2022年7月8日
-
現代ロシアの「インテリゲンツィヤ」はどこにいる=本村凌二
歴史書の棚
19世紀ロシア帝政下に自由を求めた思想家たちの実像を探求 ソ連からロシアになって30年以上がたった。いくぶんか社会の自由度も…
2022年7月1日
-
足利・三好・織田・豊臣と渡り合った宮中女官たち=今谷 明
歴史書の棚
宮中日記を縦横に駆使武家と対する女性を研究 女性による日記は、約1000年前、女房文学により始まった。しかし『蜻蛉(かげろ…
2022年6月24日
-
100年たっても変わらない理由に正面から答える書=井上寿一
歴史書の棚
変わるか変わらないか結党100年の日本共産党日本共産党は今年、結党100年を迎えた。この間にいくつもの社会主義国が生まれては…
2022年6月17日
-
現役チベット人作家10人の幻想的な短編13作=加藤 徹
歴史書の棚
近現代の激動を生きるチベット人の心象風景を読む チベットというと、中国に対して「高度な自治」を求め続けるダライ・ラマ14世が…
2022年6月10日